明石町 青山 丸の内 香港 武蔵野 北海道 帝国ホテル ハノイ 箱根 駿河台 目白台 サンフランシスコ 倫敦 横浜 宮城 アムステルダム 赤坂 淀橋 三宮 水天宮 四谷 道灌山 長命寺 草津 房総半島 四谷大木戸 ローマ 牛込 東京市 関東 足立郡 玉川上水 樺太 小田原町 箱根山 三宅坂 ニューヨーク 東京府 本州 伊吹 市政会館 関西 イスタンブール 両国 日比谷公園 巴里 神戸 京都 仙台 熊本 岐阜 奈良 静岡 深川 東京 銀座 日本橋 有楽町 浅草 麹町 日比谷 日暮里 永田町 住吉 桜田門 赤坂見附 お茶の水 虎ノ門 向島 神田 大久保 水道橋 三鷹 内幸町 新宿 小川町 新橋 大手町 京橋 神田川

並に明石町の夕景の事

出向いて、昨夜のシャンパンの瓶をも、可笑しいと思い返して明石町の「呉竹」へ押し上り、女中に瓶を取らしてから四時ごろまで寝ころんで

の飲用に当てた。なお分水としては、三田、青山、亀有の三上水があった。

またひどい。もとは日東生命の社屋だったが、それが丸の内の新館に移転して以来十年、雨風にさらされて立ち腐れになってい

一般に知らしめることははなはだ遺憾であるばかりでなく、この丸の内の中心に銃器を携えた兇徒の一団が蟠居して、警視庁に対抗

生粋のレビュー団でも何でもなく、実は上海から香港の間で駆り集めた田舎廻りの寄席芸人の一団で、中には昨日まで大馬路

「ウェールス号は昨日の午前六時に香港へ向けて出帆した」

武蔵野はもと沼沢沮洳たる荒野原で、井戸を掘れば、汚水にあらざれば満潮

笑子は古市と同郷の北海道のある僻村の産で、古市が知っているころはその村の小学校の教師

卒業して見ると果せる哉、就職口などはない。しばらく北海道の奥で小学校の先生をしていたが、その後さしたる目的もなく上京し

おや、これにしてからがすでに妙だぞ。……北海道の同じ小学校で教鞭をとっていた同僚が映画スタアに成上り、おまけに「

。……まア聞け、これを。……東京麹町区内山下町帝国ホテルに投宿中の皇帝に対し、緊急要件につき昨卅一日午後より再三再四

倶楽部の一方の旗頭、野毛山鶴見組の一味が今朝ほど帝国ホテルも間近い日比谷公園で何か立騒いでいたということもある。これだけでは

手前じきじき御返事を伺うようにとの御下命で、二十九日ハノイより旅客機を乗り継ぎ先刻到着いたしたのであります」

に喚きたてる口説を聞けば、これからニュウ・グランドへ繰込もうか箱根の環水楼へ押し出そうかという下相談と思われる。酒場の通路に長々と寝そべっ

いる。右手に黒くおし静まっているのは日比谷の森、駿河台の方に薄白く輝く白堊の建物はニコライの聖堂であろう。

駿河台の郵便局からニコライの聖堂の方へ登るだらだら坂。紅梅町から省線お茶ノ水駅へ出よう

れた鶴子の家の通い婆あのとめというのが、駿河台の「お茶松」という賭場の地下道で絞殺されているのを発見さ

の井頭池に発し、上井草の善福寺池の水を合せて目白台の下に到り、小日向台の麓に沿って後楽園内を流れ、水道橋附近で

網之助は、東北のさる高等学校の一年まで行き、サンフランシスコへもちょッと流れていった事のある男で、二枚重ねた大きな座蒲団の

一回、酒場「巴里」の場で、安南王宗竜皇帝が倫敦仕立てのタキシードの襟に婀娜に臙脂色のカアネーションを※していられたこと

彼れかまわず引ッつるんでステップを踏んでいるタキシードは、横浜の有名な高利貸の伜で印東忠介という気障なパリー帰り。入口に近い小暗い

日暮里に本宅があるから一口に道灌山といい、後者は横浜に本拠を置くから野毛山と称え、親分御用の節はいつにても一命

た暗殺者が、十二月廿七日のプレジデント・フウヴァー号で横浜に到着しています。条件は二つ。第一、なるべく日本の官憲の

た暗殺者が、十二月二十七日のプレジデント・フウヴァー号ですでに横浜に到着し、明日の午前四時、大使が拝謁に行く以前に暗殺して

李光明一派の刺客が、二十七日のプレジデント・フウヴァ号で横浜に着いている。ついさっきそれが判ったんだが、そういうことであっ

に三時半までいた。三時半を打つと、僕は横浜に碇泊しているイギリス巡洋艦の「ウェールス号」へ帰る、ジェームス・クリーヴランドという

「ウェールス号」へ帰る、ジェームス・クリーヴランドという海軍少佐を横浜まで送るつもりで、僕の車に乗せて大使館を出た。この男は僕

充分に大川筋をたんのうさせ、それから京浜国道を通って横浜の波止場まで送って行ってやった。つまり、警戒員諸君が目撃したの

「で、その巡洋艦はまだ横浜に碇泊しておりますか」

に本拠が在るから、一口に道灌山といい、後者は横浜に本拠をおくから野毛山と唱え、親分御用の節はいつにても一命

せながらやって来、二重橋の前に整列して宮城を遙拝すると馬場先門から交叉点を横切って日比谷公園へ繰込んで行く。

つ君の手で絶対秘密に処分してくれまいか。アムステルダムでもアントワープでもいろいろ奔走してみたんだが、御承知の通りヨーロッパに

大きすぎていけないというのなら、電報一本打てばアムステルダムからワインゲルという有名なダイヤモンド工がやって来てお望み通りの型に切っ

能じゃありませんよ、局長。……幸田の野郎が赤坂の妾のところに潜伏しているのを突止めたという報告がさっき来まし

際大して必要はあるまい。このとめは酒月の一家が淀橋の専売局の横露地に住んでいたころからの馴染みだが、悦子の方

から人気が落ち、まもなく退学してその後神戸の三宮辺りの酒場を転々としていたが、今から二年ほど前にふらり

を喰べながら無駄話をしていた。六時になったら水天宮様へ二人で初詣をするつもりだったので、結いたての髪を気に

た方々、あるいは、タキシーによって銀座四丁目を経て、四谷、牛込の方へ赴かれようとなさった方々がそれらの地点に差しかかった時

の式台へ降りようとするところへ書生が駆けて来て、道灌山の前田組の大親分から大至急のお電話でございますと告げる。

倶楽部の両横綱。前者は日暮里に本宅があるから一口に道灌山といい、後者は横浜に本拠を置くから野毛山と称え、親分御用の

鶴見組が帝国ホテルも真近い内山下町で騒いでいるという道灌山の電話だから、林は又しても不安に胸を鎖され、あわてて

ていると、これを見付けて駆寄って来たのは、道灌山の養子の駒形伝次。小粋なモーニングに山高帽、苦み走った一文字眉、剃

はそれとして、こいつもついでにモノにするか。道灌山に売り込めァいい顔になるぜ」

安亀が公園で騒いでいると気遣わし気に耳打ちした道灌山の養子、例の駒形の伝次。林謹直の命を受け、二千円という

には三千に余る命しらずを擁する関東組の元締、道灌山の大親分がついている。どうせ血を見ずには治まらぬのである

朱をそそいで、まるで火の玉のようになって猛り立つのを道灌山は静かに制し、

が、何となく底力のある隙のない構えである。道灌山は穏やかに唇を綻ばしてから、

、そんなことをされては私の顔が立たない。道灌山は自分の手に負えないので、警察の裾にとりついたといわれて

。一体この治まりはどうなるか。それは却説、ほどなく道灌山の自動車は「住吉」の門を走り出て、芝の方角へ。

林の話を要約するとこうである。道灌山が野毛山へ乗り込んで行って掛け合うと、安亀が日比谷で騒いだなどと

の両横綱。前者は日暮里に本拠が在るから、一口に道灌山といい、後者は横浜に本拠をおくから野毛山と唱え、親分御用の

そのトラックが動き出そうとしているところへ、前田組すなわち道灌山の大親分が宙を飛ぶように自動車で乗りつけて来て、お手間はとら

「これは道灌山の。その後かけ違って碌すッぽ挨拶も申さず御無沙汰ばかり致しておりながら、こんな

いるように思われる。これを逐字訳すると、向島の長命寺の附近で、又しても何か兇悪な事件が惹き起されようとしている

ぬほど押重なって、おどろおどろしい廃頽のさまを示しながら、ずっと長命寺の地境までつづいている。

空地の遙か南は長命寺の石塀で遮られ、東の方はやや広い溝川を隔てて道路に接して

長命寺の鐘がボーン。火の見櫓の上に、いつも新派悲劇の幕切に見るあの新月

。いわなくてもわかっている。無事に添いとげたら新婚旅行に草津へでも行こうねえ」

の事業王とまでいわれる小口翼の日興コンツェルン。一方は房総半島の漁村・廃物利用の微々たる沃度会社からのし上げ、スエーデンのマッチ王クロイゲルのマッチ

二十七、払込資本三億円の小口翼の日興コンツェルン。一方は房総半島の漁村の微々たる沃度会社からノシ上げ、林興業を主体とする傍系会社二十二

の方は西多摩野羽村から多摩川の水を分岐し、四谷大木戸から市中に入り、虎の門、田村町を経て日比谷に達し、一旦神田上水の大伏

日本橋を経て小日向台町まで、一方は虎の門を経て四谷大木戸の地下に達することが出来るのである。栗田一夢の「天明雑集」を

。金はニューヨークのナショナル・バンク、パリーのエスコート・ナショナル、ローマのローマ銀行、その他合計十六の銀行へ払い込み、赤線の小切手で全額を仕払

、あるいは、タキシーによって銀座四丁目を経て、四谷、牛込の方へ赴かれようとなさった方々がそれらの地点に差しかかった時、突然

考えて御覧なさい、われわれの日本家屋で、しかもこの稠密な東京市内では絶対に抜け出せない家屋などは一軒もないからである。日本の

の方に近づいて来る。いうまでもない。これこそは関東を二分してその覇を争う前田組の尖兵隊。

である。栗田一夢の「天明雑集」を見ると、足立郡新井方村百姓市兵衛の伜新助、すなわち、例の稲葉小僧新助がこの大伏樋

の寛永年間には、玉川清右衛門に多摩川を水源にする玉川上水を設けしめ、さらに元祿年間には河村瑞軒の設計によって石神井村三宝池

玉川上水の方は西多摩野羽村から多摩川の水を分岐し、四谷大木戸から市中

樺太庁警察部の要視察人。さんざ本州を喰いつめた末樺太へ押し渡って空拳師になり、血眼の利権屋の上前を刎ねて甘い汁を吸っ

」を出たのが午前三時ごろ。そこからまっすぐに小田原町の「すず本」に乗りつけ、みんな顔が揃ったところで薄茶を飲んでお

とか奇妙だとかてえことはある筈はないのだ。箱根山から此方に化物は出ないというが、科学の進歩した今日、この世に不思議

赤坂見附――。四時四十五分、麹町区第二哨三宅坂、――四時五十分、第一哨桜田門。……以上であります」

」。上海へんの田舎廻りの寄席芸人を集めた一座を、ニューヨークの大ジーグフェルドに次ぐ世界的大レヴュウ団にこしらえ上げたのはこの二人の仕業。

時に熱海の熱海ホテルですることになった。金はニューヨークのナショナル・バンク、パリーのエスコート・ナショナル、ローマのローマ銀行、その他合計十六

御承知の方もあるでしょう、日本橋の伊吹というのは、東京府管内の警察関係の官服を一手で納入する問屋である。どういう結果を得た

、ひと皮剥げば樺太庁警察部の要視察人。さんざ本州を喰いつめた末樺太へ押し渡って空拳師になり、血眼の利権屋の上前を刎ね

入念に書き取っている。御承知の方もあるでしょう、日本橋の伊吹というのは、東京府管内の警察関係の官服を一手で納入する問屋で

の活劇ばかりではない。この池を取巻く森羅万象、――市政会館の大時計さえも、ハタと時の歩みを止めたかに見えたので

だ。……急ぐからかいつまんで話すが、去年の春ごろ、関西に何か大きな出物があって大阪貴石倶楽部の大所がだいぶ動いているという

鶴子と二人で京都の山科に巣籠っていたのは、関西でそのダイヤモンドを捌くつもりだったんだが、そちらでは話が纒まらず

・Ｏ汽船のサマリ号でペナンへ行き、そこから旅客機でイスタンブールへ亡命される手筈に決まった。……

ちょうどこのころ、両国駅の始発列車の片隅に、古風なインバネスの襟を立て、秋風落莫たる面持で

「このごろ世間の評判では日比谷公園の鶴の噴水が歌を唄うということですが一体それは真実でしょうか

的な目撃記を「夕陽新聞」に寄せたので、日比谷公園の青銅の鶴が噴水の飛沫とともに美しい歌を唄い出すというの

が、然しそれは単なる市井の妄談ではないらしく、日比谷公園の園丁長が自身で親しくこれを聴き、和歌を一首添えた美辞麗句的

どういう次第か知らぬが、日比谷公園の池の真中に立っているあの様子のいい噴水の鶴が、この一

て宮城を遙拝すると馬場先門から交叉点を横切って日比谷公園へ繰込んで行く。

来れ日比谷公園へ！

前回でも述べた通り、どういう訳か日比谷公園の噴水の鶴が、一週間ほど前から時を定めずに美しい階音

最初にこれを発見したのは酒月という日比谷公園の園丁長だったが、夕陽新聞は他社に先んじて逸早くこの事実を報じ

歌を耳にしたいと願う市民は我れも我れもと日比谷公園に押しかけ、噴水の鶴のいる池の周りは未明から日没まで身動きもなら

さて、再び日比谷公園に立戻ると、行列は池の傍まで到着すると、雲霞の如く詰めかけた

では雑報記者の古市加十がまさに失神しようとし、日比谷公園の鶴の噴水の傍では夕陽新聞社長幸田節三が祝辞の代読を始め

とも。いう迄もない事だ。……所もあろうに日比谷公園で……。畜生、幸田節三てえのはふざけた野郎だ。……やり

大賭博、一月元日の午前九時十二分を期して日比谷公園のあの容子のいい噴水の鶴を見事鳴かしてお目にかけようという。

のに、一人壮士風の背広服が飛び出して、これは日比谷公園園丁長酒月守と幸田節三の二人で仕組んだペテンだと、裏の事情

この瞬間、日比谷公園池畔の大活劇はフッと切れた映画のように急にその動きを停め

却説、林謹直のオヴァーランドが日比谷公園の近くまで来ると、公園の方に当ってワアッと言う凄まじいどよめきが起っ

に簡単なトリックなのである。つまり、警視庁も間近い日比谷公園で無届不合法の集会をやれば、否でも警官隊が飛んで来

から飛び立つような科で立上った。つい一時間程前、日比谷公園の近くで人雪崩の下敷きになり、アワヤ圧死しようとしたところを真名

の浅黒い、縮れっ毛の、眼のキョロリとした、前々回、日比谷公園池畔、「唄う鶴の噴水」の会場で、片手に東京地図を握りながら

「夕陽」の幸田が、場所もあろうに警視庁も間近い日比谷公園で、恐れ気もなく堂々と野天詐欺を働くのをノメノメと眺めていた

ある。といったところで、警視庁に眼と鼻の日比谷公園で図太い野天詐欺を働いて、これがただですむわけはなく、刑事に

て来たのは刑事ではなかった。第三回、日比谷公園の傍で林の自動車を待ち受け、いま野毛山の安亀が公園で騒い

長の酒月と幸田社長の合作で、警視庁も間近い日比谷公園で無届不合法の集会をやれば、鶴が鳴くと予告した九時

ひょっとすると、此処を逃げ出せるぞ。そうしたら、すぐ日比谷公園へ行って……、加十は嬉しがって膝を乗り出し、

秦の始皇帝のような黒髯を風に靡かせながら日比谷公園の方へ歩いて行った。これから噴水の鶴を調べに行こうという

の旗頭、野毛山鶴見組の一味が今朝ほど帝国ホテルも間近い日比谷公園で何か立騒いでいたということもある。これだけでは当事も

はないか。それならそれでもいいが、では、日比谷公園の噴水の鶴が鳴いたのをどう片付けるつもりかしら。どうもそんな単純な

を敷く。捜査課は直ちに有明荘六人の住人と、日比谷公園「唄う鶴の噴水」の会場から皇帝を誘拐したと風評される安

時半ごろ、顎に長い黒髯を貯えた一人の人物が日比谷公園へ入って来た。八ツ手の小径を伝って高みへ出ると、腕組みを

鍵がおりていて人の気配もない。七時に日比谷公園の正門で秀陳と落ち合う約束をしていたので、笑子を追撃

ホテルに伺候いたします所存で、地図を手頼りに駅前から日比谷公園の方角に歩み出したのでござります。間もなくこの正門の前まで

したが、げにもっともな感想であった。この朝、日比谷公園では青銅の鶴が鳴き、今ニコライ聖堂の近くではまた新たな事件

前回、安南帝国皇帝附き諜報部長宋秀陳が日比谷公園の池畔に立って、五彩の光暈で包まれた周囲の高い建物を見上げ

たように叫び続けるが、皇帝の行方は勿論、皇帝を日比谷公園から誘拐したと風評のある安亀の一派も、有力な唯一の証人

さて、日比谷公園は、前回に引き続いてまだ夜である。

といって立上ると、服の泥も払わずに日比谷公園を飛び出し、踵でぼんのくぼを蹴上げるようにして田村町一丁目の方へ走っ

閑話休題、夕陽新聞記者古市加十は、安南皇帝は日比谷公園の「鶴の噴水」の台座の下にいると一図に思い込み、この

、もう裏表に張り込んでいるそうだ。それに、王様が日比谷公園から攫われたってえ評判もある。何だか急に様子が変って

皇帝は、つい警視庁の鼻の先、ところもあろうに日比谷公園の「噴水の鶴」の台座の下にいられると看破した。ああ

さて加十はそうと見込みをつけると日比谷公園を走り出し、足も空に放送局の工事場まで駆けて行ったが、

なりましたな。一方には今朝の九時ごろ王様が日比谷公園から何者かのために攫われてどこかへ持って行かれたという

日比谷署を出ると、真名古は霞門から日比谷公園の中へ入って行く。

後戻りしてその後の加十の行動を述べると、夕刻、日比谷公園池畔で秀陳から、今朝この噴水の鶴が安南の国歌を歌ったと

て自分の方へおびき寄せて取ッ掴まえようというのだろう。日比谷公園の土手を池の方へあわてて掘りかけたわけも、これで充分了解

御存じの方もあるでしょう、日比谷公園の方から来かかると、いかにもこの建物が目障りで、思わず誰も顔

兇暴な一団なので、当然死傷者もある見込で、日比谷公園の桜田門寄りの暗闇には赤十字社の病院自動車を六、七台待機さ

すでに昨朝八時ごろ、日比谷公園の「歌う鶴の噴水の会」場で、鶴見組の一派、武州小金井

「するてえと、今朝がた日比谷公園で騒いだのは、やっぱりてめえの仕業だったのか」

で砂を掛け、土橋に近い銀座裏のある町角に「巴里」という、秘密めかしいバーを出させてその女将におさまり、この二、

堪えぬところだから、今から二年ほど前に一度「巴里」へ敬意を表しに出かけて行ったことがあったが、水一杯

はもう決して離しゃアしないから。さァ妾と一緒に「巴里」へいらっしゃい、あなたの薄情を思い知らしたげるから」といって古市の手の甲へ

に解決して貰うことにして、我々は再び酒場「巴里」に立戻ると、古市加十はその時あたかも差出されたウイスキー・ソーダを

こういう工合にして古市加十と怪人物は「巴里」を後にして薄暗い銀座裏に迷い出ることになる。

文教をされたことは、前にも述べたが、巴里に遊学して七月十四日に大統領官邸の近くで観兵式を見物した

に、モナコやモロッロの王様と並んで、何時の年の巴里祭に見ても、常に悒然たる面持で佇んでいる、日本名を

触れなかったが、仮りに宗皇帝と手を携えて「巴里」以来各所を酔遊した次第を告白すれば、何しろあんな異相の皇帝

の音も忍びやかに辷り込んで来た一台のタクシー、「巴里」という酒場の真ん前で停る、その中から四五人の男女が降りて

たロードスターを歩道の傍へ乗捨てると、これもそそくさと「巴里」のなかへ入って行く。

映画女優現在は朝鮮捕鯨会社社長伯爵岩井通保の妾で「巴里」の女将なる村雲笑子の四人。何か手痛い目にでも逢った

その顔触れを見ると、前夜「巴里」で駄々羅遊びをしていた、既に前々回でお馴染の連中。

次第を叙述しように、昨夜古市加十と宗皇帝が「巴里」を出て行くと間もなく、明元日から日本座で開演する生粋

と両人の関係を紹介するに止め、さて再び以前の「巴里」に立戻ると、ハッチソンはニヤニヤ笑いながら山木の話を聞いていたが

たのです。昨夜宗皇帝はいつの間にか、「巴里」を脱け出されたが、これは勿論鶴子丈の許に行かれたの

「殺られたとすれば、無論クイーンの方ね。巴里時代の皇帝の行状を知っているものなら、有りそうなことだと思う

の旦那と岩井の且那は、モロに皇帝に喰い下って巴里で大尽遊びをしていなすった方だから、その旦那がそう言われる

留学している安南独立党の連中に逢って、皇帝が巴里でどんな仕事をしていたかみな聞いて知っている。……レユニオン

まはんたちから見たら阿呆としか見えなかろうが、私は巴里に留学している安南独立党の連中に逢って、皇帝が巴里でどんな

は夕陽新聞社長幸田節三が祝辞の代読を始め、酒場「巴里」の門前へは今ハッチソンのロードスターが停った。あたかもこの頃、霞ヶ関、内務

を見渡せる窓際の席に掛けている婦人は、ついさっき「巴里」にいたアパート有明荘の住人の一人。アメリカ帰りのダンサー川俣踏絵。

ものと知られる。時刻からいっても前回岩井伯爵が「巴里」へ現われて松谷鶴子の変死を報告してからまだ一時間とは経っ

の珊瑚王の伜山木元吉。その風体を見ても「巴里」からまっすぐここに来たものと知られる。時刻からいっても前回岩井

にして入って来たのは、これもつい先刻「巴里」にいた例の珊瑚王の伜山木元吉。その風体を見ても

。何しろ、山木も印東も有明荘の住人で、むかし、巴里で皇帝と駄々羅遊び……」

東京会館の忘年会を飛び出して「巴里」で皇帝に逢い、相携えて銀座裏を飲み歩き、三時近くに有明

高い女っちょが俺の手なんぞを執って、無理やり「巴里」へ引っぱって行った。そこには皇帝がいて、その朝殺人事件

をとっていた同僚が映画スタアに成上り、おまけに「巴里」という贅沢な酒場まで出したというから、同郷の懐しさで一

それと判る混血面。第三回、ロード・スタアで「巴里」へ乗りつけて来た、有明荘の住人の一人、仏国「ホヴァス」通信社

に三台の自動車に分乗し、三時十分に「巴里」を出発し、同三時廿分に築地小田原町の待合「すず本

盃をふくんでおりますのは、第三回、酒場「巴里」の場へ登場した、有明荘六人の住人の一人犬居仁平の

ァ、いかん。……聞けば、あんたと山木とは巴里以来の切っても切れぬ仲だという。……それを、そんなちょろっ

、われわれ六人とショウの六人とひッつるんで「巴里」を出たのが午前三時ごろ。そこからまっすぐに小田原町の「

尻眼にかけて帝国ホテルを飛び出してまっすぐに銀座裏の「巴里」へ行って見ると、あにはからんや、（本日休業）という貼紙

荘の住人の一人である村雲笑子が、皇帝のいる「巴里」へ無理やり自分の手を執って引張って行ったことも怪しいし、皇帝

岩井通保と、その妾で元映画女優、今は酒場「巴里」のマダムの村雲笑子、最近アメリカから来た、当時売出しのダンサー川俣踏絵

足でここへやって来たものと見え、ゆうべの「巴里」における有明荘住人忘年会のそのままのタキシード姿で、自在鈎の

岩井は明石署から釈放されると、銀座裏の酒場「巴里」で他の五人と落合い、その足でここへやって来たもの

すでに御承知であろう、岩井は村雲笑子を妾にして「巴里」という酒場を出させながら、一方踏絵をも情人にしている。

も一番やりやすいのは花なんだ。わちきたちが「巴里」で忘年会をして朝まで帰って来ないことも知っているし、

じゃない、まだこんなことがある。……わちきが今朝「巴里」であんたに別れて虎ノ門を歩いていると、向うからひどく蒼い顔を

さて次ぎの日、といったって昨夜の話だが、「巴里」の忘年会の席で、俺がトイレットへ立って行くと、王様が椰子

ていると、間もなく王様は暗殺者と一緒に「巴里」を出て行かれた。

ほうほうの体で「お茶松」へ逃げ込んだんだあ。「巴里」なんざ、もう裏表に張り込んでいるそうだ。それに、王様が日比谷公園から

。……俺の睨んだところでは、あの刺客を「巴里」へ手引きしたのは笑子に違いないんだが、その笑子が俺

多分御記憶になっていられるでしょう。第一回、酒場「巴里」の場で、安南王宗竜皇帝が倫敦仕立てのタキシードの襟に婀娜に

と、「巴里」の忘年会の席で、あすの朝の三時半ごろ、そっと鶴子の家

ということですが、先ほどもいった通り、暗殺者を「巴里」へ手引きして来たのは笑子なんだから、そういう連中と

か。……岩井の旦那がいらっしゃるのとほとんどいれちがいに「巴里」を出たのですから、九時半ごろでもありましたろうか」

へ帰るといってアタフタとわれわれに別れたくせに、「巴里」へ入っていらした岩井の旦那の風態を見ると、まず昨夜のまま

はわれわれには有明荘へ帰ると嘘をついて、「巴里」へ現われる一時間半ほどの間どこかの田舎道を駆け廻っていらしたの

どこまで発展しようとするのだろう。昨夜王様とつるんで「巴里」を立ち出た以来のことを思い起すと、事件は波瀾に波瀾を重ね、

その一つはオールバックの下に鄭重に隠され、仏蘭西巴里はゲラン会社製の「花の夢」というが如き高尚なる香水で扮飾

痛めてから人気が落ち、まもなく退学してその後神戸の三宮辺りの酒場を転々としていたが、今から二年ほど

。この取引がすむと、王様だけがすぐ熱海を発って神戸へ飛び、三日正午出帆のＰ・Ｏ汽船のサマリ号でペナンへ行き

東京へ来られたのは今度が始めてだ。以前は京都の山科の奥に茶室を建てて、一ト月ぐらいずつその女と一緒

を中止して、今日の午後四時十分の汽車で京都を出発し、明朝午前四時に東京駅へ着くと、駅からすぐホテルに

来るか、これですっかり謎がとけた。鶴子と二人で京都の山科に巣籠っていたのは、関西でそのダイヤモンドを捌くつもりだった

「松谷鶴子の原籍は京都市東山区山科町深野百二十番地。前京都府警察部長殿御原籍は京都市東山区山科町深野百二十番地であります」

。その大使は今日の午後四時十分の不定期急行で京都を出発し、今まさに帰京の途中にある。明朝午前四時までに、

だ築地の待合「すず本」の検証、現警視総監すなわち前京都府警察部長と松谷鶴子の身元調査、並びに元日の午前三時五十分

十、仙台平の御袴の事

しも立現われて来たのは、黒羽二重の紋服に仙台平の袴を折目高く一着に及んだ、五十二三の福々しい恵比須顔

日本における新興コンツェルンの双璧。一方は熊本の山奥の僅か八百キロの電気会社から出発して今では構成会社二十七

近代日本における新興コンツェルンの双璧。一方は熊本の山奥の、僅か八百キロの電気会社から出発して今では構成会社

まさに六時廿分。大使の乗った不定期急行は、もう岐阜あたりまで来ている。午前四時までにはあと僅か九時間と四十分

「事の起りは今から二年前の五月ごろ、奈良ホテルとあるだけで差出人の名のない電報が来て、ぜひ山木に逢い

を過ぎることまさに廿分。仏国大使の乗った汽車ははや静岡へんまで来ているというのに、誘拐された皇帝の行方が皆目

二人の警視総監が同時刻に、一人は赤坂区、一人は深川区を巡視されたことになるわけであります」

五十分から四時五十分までの間に総監殿が、深川区第二歳晩警戒哨、清澄公園角から、向島押上町、猿江公園、洲崎

間に、二人の警視総監が、一人は赤坂区、一人は深川区に時を同じくして出現し、歳末警戒の慰労巡視を行なったと

ているんだ。……岩井が総監の身代りになって深川くんだりを巡視し、総監の不在証明をつくってやったというのはどんな因縁

真名古君、ちょっと伺うがね、一日の午前四時ごろ深川へんを通っていた総監について、君はどういう報告を受取っている

一年のドンじりという極月の卅一日、電飾眩ゆい東京会館の大玄関から、一種慨然たる面持で立ち現われて来た一人の人物。

はチェスターフィールドだが、襟裏を引っ繰り返して検めて見ると、「東京テーラー」という有名な古手問屋の商標がついていようという寸法。他

受けてはさすがにもはやいたたまれない。奮然と席を蹴って東京会館を飛出したが、何としても胸のムシャクシャは治まらぬ。根

やがてはトップリ暮れようという心細い有様。今日しも同業者の忘年会が東京会館で行われるにつき、古市加十は「夕陽新聞」を代表して

。笑子はこの事件のために村にいたたまれなくなって、東京に出て来て「白猫」というカフェーで女給に住み込んだが、計ら

「加十さん、あなたぐらい薄情な方はなくってよ、東京にいながら一度も尋ねて来て下さらないんですもの、お怨みするわ

一体それは真実でしょうか。実を申すと私はついこのごろ東京に着いたので、一向詳しいことを知らないのですが」

というので「唄う鶴の噴水」の事は急に東京の市中でやかましく評判されるようになった。

古市加十が、今夜東京会館の忘年会で不当な侮辱を受けたのは、その裏に「唄う鶴

東京市の公園課でも捨てては置けず、音楽学校の教授を委嘱し

それは兎も角それが事実だとしたら、これはいかにも東京ふうな出来事だと思いませんか」

ああ、その点ならば私も同感です。これは確かに東京ふうな出来事に違いありません。どうでしょう、これから一つ私を案内

いるのはお馬婆と多少の官憲を除けばこの広い東京で古市加十ただ一人。しかもその加十はこの事件の目撃者で同時に

式の順序を言えば、まず幸田節三の挨拶、東京市役所水道課長の感想、この瑞兆の最初の発見者たる酒月園丁長に対する

その区域は大東京のみならず近接の郡部に及び、全東京府の電柱はことごとくこのビラによって蔽われたといっても過言で

ビラを一斉に各所に貼布させた。その区域は大東京のみならず近接の郡部に及び、全東京府の電柱はことごとくこのビラに

しているという評判だったが、昨年の夏ごろホヴァスの東京支局長となってひょッくり戻って来た。

どうして、なかなか。……今もいった通り、広い東京でわれわれ有明荘の住人だけが検束されたんですぜ。……いや

。……時に君は安南帝国の宗皇帝が微行で東京に来ていられることを知っているかね」

それはともかく、手っ取り早く事件の概略を述べると、皇帝は東京で松谷鶴子という女優上りと内縁関係を結んで居られた。……ところ

でもつい最近まで誰一人その事実を知らなかった。今度東京に来られたのは先月の廿四日で、ずっと帝国ホテルに居られる」

「いや、昨年も一昨年も来ていられる。然し東京へ来られたのは今度が始めてだ。以前は京都の山科の奥

「皇帝が始めて東京に来られたのだとすると」

報が来た。……まア聞け、これを。……東京麹町区内山下町帝国ホテルに投宿中の皇帝に対し、緊急要件につき昨卅一

のためにすっかり動顛してしまったものと見え、片手に東京地図を握りながら、アッケラカンといつまでも鶴の口元を眺めているので

正午の市会が夜中に始まるようなもので、こんなのが東京ふうだと思って貰おう。……それは兎も角、そもそも鶴が唄った曲

有明荘のお馬婆と多少の官憲を除くと、広い東京でこの俺ただひとり。のみならずこの俺なるものは犯罪のつい五分

この小説の第一回において、古市加十なる人物を東京会館の玄関から引張り出したまま、どういう閲歴を持つ人物か只の一度も

。入って来たのはだれだと思いますか。この東京で直き直きに皇帝の顔を見知っているのは、有明荘の六人の

さすがに東京一といわれるアパートだけあって、万事豪奢な取廻し。足首も埋まりそうな

とお馬婆を除いては、同業はもちろん、この広い東京に誰一人知るものもない「安南帝国皇帝宗竜王の殺人」というこの

顔をつくっている。映画好みの混血面ではない、東京の、純日本の精華である。

日比谷公園池畔、「唄う鶴の噴水」の会場で、片手に東京地図を握りながら、いつまでアッケラカンと青銅の鶴の口元を眺めていた

なりと附会して安南政庁に密訴、すでに仏国安南総督は東京駐箚仏国大使に右に対する事実調査を電請せり。売却の事実判明せば

「……「大日本帝国、東京麹町区内山下町帝国ホテル内安南帝国皇帝宗竜王宛　安南帝国理事官長。……

盗伐事件に引っかかり、アワヤというところを危うく体を躱して東京へ逃げ戻り、こんな姿でホトボリをさましているうち、娘の悦子が取りもつ縁

組みをしていると、志摩徳の家来の、例の東京貴石倶楽部の松沢がやって来てナ、それで今まで話し込んでいたん

、そちらでは話が纒まらず、それで、今度は東京へやって来た」

東京会館の忘年会を飛び出して「巴里」で皇帝に逢い、相携えて銀座裏

この広い東京で、このたった六行の記事を加十ほど感慨深く読んだものはある

この辺が、「東京」を称して一と口に魔都と呼び慣わす所以なのであろう。われわれ

「……俺は昨夜七時に腹を立てて東京会館を飛び出した。ここまでは、……何も変ったことはない。

俺はこれからお前と散歩に出かけるつもりなんだが、東京では、安南と反対に、この素顔が知られすぎていて少々まずい

「ここは順化の町端れじゃねえ、東京のど真ン中だ。俺を出し抜こうたって……、おい、王様をどこへやっ

手にかけさせるように取計らう事、第二、死体は東京のもっとも眼抜きの場所へ投げ出して置く事。……あなたの方にも

かそのおつもりで。……では申します、安南皇帝を東京で暗殺する計画があります。皇帝の反対派、皇甥李光明一派から密

いやしくも一国の皇帝が日本の領土内、然も東京のど真ン中で誘拐されたとあっては実にどうも由々しい問題、

いる。しかも、なるべく日本官憲の手にかけさせ、死体は東京の目抜きの場所へ投出して置くという条件付なのである。

警視庁は俄かに色めき立つ。全東京の警察網は一斉に戦時体制に入った。本庁では急遽捜査会議を

に名代の手腕家の志摩徳兵衛、続いてその子分の、東京貴石倶楽部の松沢一平、夕陽新聞社長幸田節三。その向いにタキシードの膝を

はないのだからボロいその夢は忘れられない。今度は東京でうまく行きそうだからと、昨年の十二月に、山木の方から王様

がしき都ではありましょう。手前らには、この大東京の、この大都会の大気の中に、さながら空気中のアルゴンの如くに、

見渡せば、大東京は朧月の空の下に甍々をならべ、その際は淡い靄の中に

由々しい大問題が惹起する。万一、日本国内で、ああ、しかも東京のど真ン中で皇帝が暗殺されたりしたら……、その結果こそ思いやら

紳商の邸宅とも見えるのだが、実はこれは旧東京市内二十六カ所の賭場のうち、もっとも殷賑を極める賭博場で、その方の

カロオ風の綺談」でもあるまいし、二人の警視総監が東京の中央と南に同時に出現したなどというのは、あまりに幻想的

御承知の方もあるでしょう、日本橋の伊吹というのは、東京府管内の警察関係の官服を一手で納入する問屋である。どういう結果を

と見え、壁の上に口を開けた拡声器からは、東京市郡全体の、戦争のような捜査の行進状態が、狂い出した鸚鵡の

、足跡らしいものは一つもない。十二月二十七日以来東京には降雨がなく、また風も吹かない。四銃士の一人が、庭

考えて御覧なさい、われわれの日本家屋で、しかもこの稠密な東京市内では絶対に抜け出せない家屋などは一軒もないからである。

騒ぎ始めた。フランス政庁でも捨ておけぬことになって、東京駐在のフランス大使にその実否を確かめさせるという思いがけないことになってしまっ

が来、王様の方では湯治と見せかけて八時の東京発で熱海へ行く。この取引がすむと、王様だけがすぐ熱海を発っ

ない。例の幸田節三の相棒の酒月守、印東忠介、東京貴石倶楽部の松沢平吉、その他もう一人、黒サージの服を着て折鞄

することが出来る。この秘密の暗道こそは、魔都「東京」を形成するあらゆる都市機構のうちもっとも魅惑に富む部分でなければならぬ

の迷路は、蜿蜒十数里にわたって今もなお大東京の地下を蜘蛛の巣のように這っているのである。大伏樋の

明治四十四年に刊行された「東京市水道小誌」を見ると、明治四十年に岩崎久弥の千川水道会社の

この家は、もと北大教授、今は東京市土木局嘱託浅見厚太郎博士の邸なんだが、すると加十は

の、日比谷公園々丁長酒月守、志摩徳兵衛の手代で東京貴石倶楽部の松沢とともに、山木元吉と川俣踏絵が抱き合わんばかりにし

ひいたんですが、考えて見れァ、この節、東京の市中では、あんな赭土にはお目にかかりたくたってお目に

東京御滞在中の

以来、帝国ホテルに御滞在中の安南帝国皇帝宗竜王殿下は東京に於て御宝歳を加えられた。かねて日本びいきでいられる殿下に

しめ、密告者の電話にあった通り、その惨殺体を東京市内の目抜の場所に投げ出されでもしたら、大臣の首などは

なく二時だ。泣いても喚いても汽車は刻一刻東京へ近づいて来る。諸君、この事実をどうするんだ」

も足も出ないのであろうか。この魔がしい「東京」の魑魍の世界は、あまりにも玄妙を極めていて、秀抜なる

となり、延々十数里、さながら蜘蛛の巣のように東京の地下を這い廻っている。

つまり、加十は魔都「東京」を形成する都市機構のうちで最も怪奇な場所にいるのである。

永井荷風や、小山内薫の小説を耽読して、かねて古い東京の風物に憧憬を持っている。最後のランチの時間は五時十分で

になったのだろう。総監の服を着た人物が、東京の中央と東部に同時に出現したという、あのホフマンふうな事件が

というすさまじい叫び声が、大東京のこの目貫の四つ角で、夜の寂莫を破ってけたたましく響き渡った。

廻っている。これこそは大都会の魑魅魍魎どもが、この東京の丑満時にほしいままに嬉戯するすがたなのである。

東京の目貫の四角で一体何が起ったというのであろう。声のする

さらされ、そればかりか、ひょっとすると、その死体が、東京のもっとも目貫の場所へ投げ出されようという大非常時。どんなことがあっても

五百万の民草を統治する一国の皇帝が、いまやこの東京において暗殺の危機にさらされ、そればかりか、ひょっとすると、その

の大スクープをモノしようなどと企てたばっかりに、魔都「東京」の魑魍の呪を受け、こんな悲惨な最後をとげることになった。

竹が風に揺られている有様なんていうものは、これが東京丸の内の地内かと怪しまれるばかりのはかなさ。

乙亥正月二日、午前三時五十分。首都大東京の中心。丸の内有楽町に行なわれたこの壮烈な市街戦の事実を御存じの方

機能をあげて事態遮閉に努め、この凄絶な戦闘は、東京市民が誰一人知らぬうちに完了されてしまったのである。

しねえ。……それを、何だ。場所柄もあろうに東京のど真ン中にたぐまり込み、機関銃なんぞかつぎ出すなんていうのは、ちっと行きすぎて

ならねえ羽目に落ちねえとも限らねえ。フランスの大使が東京へつくまでに、なんとかして王様をホテルにお帰し申し、うまく

にはいない。嘘をいって済まぬ。岩井さんを東京から落すために、こんな騒ぎをしたのだ。親分ゆるしてくれ。

た。あの優しげな花の写真を胸に秘め、いま東京を立ち去ろうとするあの不幸な真名古の姿であった。

見当らぬ。追々尋ねて行くと、遙かに霞む末席の「銀座だより」という怪しげな花柳新聞の隣に加十の名札が放り出され

方へ歩いて行った。作者はこれから古市加十を銀座裏に引張って行く。どういう宿縁か古市加十はそこで或る怪しい人物に

が人の出盛り。紋日々々には訳もなく銀座へ銀座へと押出して来る物欲しげな人波が、西の片側道を小波立てて

は今が人の出盛り。紋日々々には訳もなく銀座へ銀座へと押出して来る物欲しげな人波が、西の片側道を小波

服部の時計台はまさに九時を報じ出そうとする。銀座は今が人の出盛り。紋日々々には訳もなく銀座へ銀座へ

も無い映画女優などは後足で砂を掛け、土橋に近い銀座裏のある町角に「巴里」という、秘密めかしいバーを出させてその

角から折れ曲り、人目も恥じずに手を執り合ったまま銀座裏の暗い横丁へ。

加十と怪人物は「巴里」を後にして薄暗い銀座裏に迷い出ることになる。

忘れるなんてことはないと思うけど。でもひょっとしたらまた銀座でも飲み廻っているのかも知れないわ。ほんとに憎らしいことねえ。

加十という夕陽新聞の雑誌記者が、大晦日の夜、銀座裏で異相の怪人物、実は御微行中の安南の国王、宗皇帝

素ッ頓狂な雑誌記者輩と引ッつるんで、ほしいままに銀座裏を酔遊なさろうというのは、御微行中という事情ばかりもあろう

夜の繁昌に引かえて朝の銀座裏は至って閑寂。況んや元日の午前八時半、門松も枝を鳴かず鳶

もこれだけ美しければ確かに一つの事件である。たとえば銀座で擦れ違う美人の数は多いが、眼を瞠らせるというのはそうザラ

忘年会を飛び出して「巴里」で皇帝に逢い、相携えて銀座裏を飲み歩き、三時近くに有明荘へ赴いて鶴子と三人で夜食

。……これァ、何かある。俺と笑子が銀座で逢ったのは偶然だとしても、俺を無理に皇帝のいる

は、……何も変ったことはない。それから、銀座で村雲笑子に逢って……、おや、これにしてからがすでに妙

（只今、自動電話、銀座の十二番から皇帝暗殺計画に関する重大な密告があるから警視総監に、と

（総監ですか。……こちらは銀座の十二番です。だいぶ待たせましたね。話を長引かして私を掴まえよう

警固の私服を尻眼にかけて帝国ホテルを飛び出してまっすぐに銀座裏の「巴里」へ行って見ると、あにはからんや、（本日休業

岩井は明石署から釈放されると、銀座裏の酒場「巴里」で他の五人と落合い、その足でここへ

「それだ。少し厄介な仕事だが、お前はこれから銀座の松坂屋の前へ行って、十時から十時四十分までの間に

「手前ら、これより銀座松坂屋の前に赴き、十時から十時四十分までの間に、河童

のあおりを喰って失業の憂目に逢った楽士氏か、銀座裏のバアテンダー氏の成れの果てといったところ。まことに場所柄にふさわしい人体である

ずにその家を飛び出し、家の前でタクシイを拾って銀座の松坂屋の前に行き、茫然と町角に立って河童の皿のついた

、真名古が有明荘へソロソロと忍び込んでいたころ、銀座尾張町の松屋の横丁の、夜明しのおでんやの暖簾をかいくぐって、運転手

あたかもそれが「銀座」の記念塔ででもあるように、優雅なようすで聳え立っている服部の

三十九、銀座の死刑台の事

新橋の方を眺めると、街燈の光も淡くほのかに、銀座の峡は深沈たる闇の中に沈み、闃然とものの音もない。

いうひと時、深夜の寂寞を破って、並々ならぬ叫び声が銀座四丁目の四角で起った。耳をすますと、切々たるその叫声は、人殺し

という。馬鹿なことをいっちゃいかん。見上げるところ、銀座の記念塔ともいうべき優雅なる時計台は、プリュニイ氏式の淡い間接照明を

ではない。つまり、この高尚優美なタキシードの紳士は、銀座街角の時計台上において絞首の刑に処せられていたのだった

を仰ぐ何びとがそれを予知し得たであろう。銀座の街角の時計台で絞首の刑を行なうなどというのは、あんまりひどい仕方

銀座尾張町、時計台上の優雅なる殺人事件は、一本の電線にのり、こう

日比谷の交叉点から銀座の方を向いて電車通りを行きかかると、ちょうど美松と対角線上に、

四谷見附、九段上、小川町、呉服橋を経て再び銀座四丁目に至る。この大円周上には三十二の哨所を置き、円周上のあらゆる

起点にする円周内のあらゆる交通を遮断してしまった。銀座四丁目、新橋駅北口、溜池、四谷見附、九段上、小川町、呉服橋を

と同時に、捜査本部は即刻各支部に非常警報を発し、銀座四丁目を起点にする円周内のあらゆる交通を遮断してしまった。銀座四丁目

山手へ帰ろうとされた方々、あるいは、タキシーによって銀座四丁目を経て、四谷、牛込の方へ赴かれようとなさった方々がそれ

轍をぬらしながら、ちょうど日比谷の交叉点まで来た時、銀座四丁目の方から旋風のように飛んで来た一台の自動車。危うくトラック

に存在することになっている。夕刊四ページ毎夕発行、日本橋の末広ビルの三階に本社があって副業に「化粧品新報」という

この家は日本橋の袋物問屋の、洋行帰りの若且那が外国で見て来たアパート

で、壁塗りの仕上った時間を確かめると、タクシーを拾って日本橋の伊吹という洋服屋へ行き、何か細かに問い合わせたのち、その足

これを入念に書き取っている。御承知の方もあるでしょう、日本橋の伊吹というのは、東京府管内の警察関係の官服を一手で納入

まず最初に日本橋の伊吹という洋服問屋へ行って総監の寸法帳を出させ、これを

、水道橋附近で大樋をもって神田川を渡り、神田、日本橋、京橋に供水し、日比谷門下の地下を通り数寄屋門附近で濠に

、一度も地上に現われることなくして、一方は京橋、日本橋を経て小日向台町まで、一方は虎の門を経て四谷大木戸の地下に

げな事を呟やくと、それから急に足取りを早めて有楽町の方へ歩いて行った。作者はこれから古市加十を銀座裏に

があり目下追跡中です。安亀一味十名は築地から有楽町附近に移動した形跡があり、これも目下追及中です。以上）

皇帝は健在。有楽町二丁目角、元日東生命の廃屋中に監禁せられあり。屋内に安本亀

日、午前三時五十分。首都大東京の中心。丸の内有楽町に行なわれたこの壮烈な市街戦の事実を御存じの方はすくなかろう。読者諸君

たことを思い出されるでしょう。読者の中には、その際有楽町の方から単音符をうつような、気ぜわしい連続音が聞こえてくるのを

大列がさながら天からでも繰り出してくるように蜿々と有楽町の方に近づいて来る。いうまでもない。これこそは関東を二分

。その中から転び出るように下り立った一人の人物。今しも有楽町の方へ急カーブを切ろうとする先頭のトラックの真前に突っ立つと大手を

有楽町の通りを一人の酔漢が口笛を吹きながら蹣跚たる足どりで歩いて行く。

生田流の琴の師匠の間に生れた半紅毛人。浅草の金竜館で後の氏原芳家などと一緒にテナーの真似事をして

浅草聖天横町、これをもう少し行くと日本堤になる。馬道と背中合せの

の武士に発見されて捕われ、同年十月廿二日浅草で梟首になった。

含んでいる二人の人物があります。一人は、前回、浅草簡易ホテルの場で折鞄を抱えた執達吏体の男を従え、悪徳夕陽新聞

に仰天したか、むしろ淡白に所懐を述べたのち、浅草の木賃宿で立聴きした山木と踏絵の会話を紹介している。

が来た。……まア聞け、これを。……東京麹町区内山下町帝国ホテルに投宿中の皇帝に対し、緊急要件につき昨卅一日

「……「大日本帝国、東京麹町区内山下町帝国ホテル内安南帝国皇帝宗竜王宛　安南帝国理事官長。……再三

十分、第六哨赤坂見附――。四時四十五分、麹町区第二哨三宅坂、――四時五十分、第一哨桜田門。

が、この大伏樋から無数の分樋が縦横に走り、麹町の地下一帯は、かのパリ市の暗渠道にも劣らぬ複雑極まる大地下

九、日比谷の森揺ぐ事

歓声とともに万雷の如き拍手をおくる、その声々にさながら日比谷の森も揺らぐかと思うばかり。鳴りをひそめていた楽隊はこれに

「時に、あの日比谷の騒ぎはなんですかい。噴水の鶴が鳴くとか鳴かんとか

とめという通い婆。これに応対している細面は、日比谷公園々丁長酒月守の娘の悦子。丸越百貨店のエレベーター・ガールをし

。……実はさっき、お前が出て行ってから、日比谷の会へ安亀が騒ぎに来たことを何気なくハッチに話すと、

「今朝日比谷で騒いでいた安亀の一味十人が「呉竹」の離座敷にいる

山が野毛山へ乗り込んで行って掛け合うと、安亀が日比谷で騒いだなどというのは初耳だ。身内の恥になることだから

中に溶け込んでいる。右手に黒くおし静まっているのは日比谷の森、駿河台の方に薄白く輝く白堊の建物はニコライの聖堂であろう。

日比谷の向うの長い地平線は一種夢幻なる光暈に包まれ、緑の、青の

あたし、あなたのやさしいところを見ているのです。けさ、日比谷であたしが人雪崩の下敷になって、もう少しで押し殺されようとした

は、夕陽新聞社長幸田節三の相棒、読者各位辱知の、日比谷公園々丁長酒月守の人を喰った発案で、もとより根も葉も

知っている。その日興の傘下にある野下山の一味が日比谷で騒いだとすれば、皇帝を誘拐したのはやはり日興の仕業な

神田川を渡り、神田、日本橋、京橋に供水し、日比谷門下の地下を通り数寄屋門附近で濠に達する。

、四谷大木戸から市中に入り、虎の門、田村町を経て日比谷に達し、一旦神田上水の大伏樋と合し、更に分れて山下門橋から西

男を従え、悪徳夕陽新聞社長幸田節三、その相棒の、日比谷公園々丁長酒月守、志摩徳兵衛の手代で東京貴石倶楽部の松沢ととも

な返事だった。王様は警保局長の命令で、日比谷署の留置場へ放り込まれてしまったというのである。

真名古が日比谷署の留置場へ行って見ると、そこに意外な事件が起っていた

人がいるかいないかぐらいのことはひと目でわかる。日比谷署は木骨コンクリートの、バラック同様なザッカケない建物だが、しかし、いやしくも

おいてそういう自由主義は認めんことになっている。現に日比谷署当局は、真名古の発見によって初めてこの事実を知り、それに

日比谷署当局は、古市加十なる拘留人が看視の隙を覗って幾度と

冷凉陰気な面にかえり、静かに梯子を降りると大股に日比谷署の建物の内部へ入って行った。

日比谷署を出ると、真名古は霞門から日比谷公園の中へ入って行く。

第九回で述べたように、芝田村町からこの日比谷一帯へかけた地下には、徳川時代の神田、玉川二上水の大伏樋

ことが出来たのでした。……私はね、いま日比谷公会堂の地下室にいるんですが、ある事情があってそこへ入って行け

ことだけはわかる。王様をおびき寄せようとした悪党が、日比谷公会堂の地下室にいるといったのは嘘ではなかった。

落ち込んだのだ。南部甲斐守の邸は、ちょうど現今の日比谷公会堂が建っている辺りにあった筈だから、自分はいまその近くの

それも、そう遠いところにいる筈はない。王様を日比谷署から持って行ったのは、午前二時から二時半までの間だ

日比谷の交叉点から銀座の方を向いて電車通りを行きかかると、ちょうど美松と

トラックの列が暁天の霜に、轍をぬらしながら、ちょうど日比谷の交叉点まで来た時、銀座四丁目の方から旋風のように飛んで

「今夜、日比谷警察の留置場から王様をつれ出したのも、やはりてめえの仕業なのか」

組というのは、関東土木倶楽部の両横綱。前者は日暮里に本宅があるから一口に道灌山といい、後者は横浜に本拠を置く

鶴見組というのは関東土木倶楽部の両横綱。前者は日暮里に本拠が在るから、一口に道灌山といい、後者は横浜に本拠を

これと同じころ、時間でいえばちょうど午後五時ごろ、永田町内相官邸では内務外務両大臣、各次官、欧亜局長、警保局長

場面一転して、ここは永田町内相官邸、会議室の大テーブルを囲んでいるのは、内務、外務両大臣

あたかもこのころ、永田町の内相官邸では、前々回に引続いて例の六人の大人物、すなわち

築地明石町、「住吉」の奥まった座敷。応挙の「蓬莱山図」と葉牡丹を根〆にし

なるか。それは却説、ほどなく道灌山の自動車は「住吉」の門を走り出て、芝の方角へ。

二哨三宅坂、――四時五十分、第一哨桜田門。……以上であります」

、四時四十三分、三宅坂、四時四十五分には桜田門の警戒哨を通過し、警視庁附近まで来たところでいずれかへ姿

四時五十分の間に、総監殿が溜池交叉点から桜田門までの間を慰労巡察されたという御報告を差しあげましたが、

一団なので、当然死傷者もある見込で、日比谷公園の桜田門寄りの暗闇には赤十字社の病院自動車を六、七台待機させ、

時五十分であります。四時四十分、第六哨赤坂見附――。四時四十五分、麹町区第二哨三宅坂、――四

ロード・スターに皇帝の身体を隠し、四時四十分、赤坂見附、四時四十三分、三宅坂、四時四十五分には桜田門の警戒哨

まで帰っている。つまり、総監は殺人現場に近い溜池から赤坂見附までの、わずか三分ぐらいで行かれる間を五十分もかかっているの

して溜池交叉点を通過し、同四時四十分に赤坂見附を経て警視庁の附近まで帰っている。つまり、総監は殺人現場に

二十五、お茶の水風景の事

寄りの楽屋入口から戸外へ運び出し、それより自動車に乗せてお茶の水の土手に到り、永井病院の筋向いのあたりで死体を降し、また土手の

第四回、虎ノ門の晩成軒で山木元吉と怪しげな密会をし、これもその足で

ある。……わちきが今朝「巴里」であんたに別れて虎ノ門を歩いていると、向うからひどく蒼い顔をして花子がやって来る

…とんだお軽だあ、風邪をひくぜ。……今朝、虎ノ門で逢った時、わちきがちょいと鎌をかけて見たらひきつけそうになった

が、深川区第二歳晩警戒哨、清澄公園角から、向島押上町、猿江公園、洲崎弁天町までの間を巡視されていたことが

分から四時卅分ぐらいまでの時間には、僕は向島から押上の辺をドライヴしていた」

煩わさずに自分自身でやれそうなもんじゃないか。君は向島を巡視したのが岩井で、有明荘へ現われたのが僕だと

伝えているように思われる。これを逐字訳すると、向島の長命寺の附近で、又しても何か兇悪な事件が惹き起されようと

作者は名文のおみちびきに従って、これから真名古を向島に急行させる。そこではそもそもいかなる事件が起ろうというのか、それ

な疳高い声で絶え間もなく報告される。いま捜査本部の神田班が「お茶松」の賭場に有明荘の住人岩井通保と川俣踏絵が

によれば芝田村町からこの日比谷ヶ原一帯の地下には、神田、玉川二上水の大伏樋が、さながらクレエト島の迷路のように縦横無数

田村町からこの日比谷一帯へかけた地下には、徳川時代の神田、玉川二上水の大伏樋の分樋が相交錯しながら縦横に走って

に追従するため、嫌々ながら、「享保撰要類集」や大久保主水の「天正日記」の古地図を引繰り返して、大伏樋の配置を

たが、常に混濁且つ涸渇するので、天正十八年大久保藤五郎に命じて上水池を検せしめたところ、井の頭池の水が飲用に

「御心配無用です。大久保主水の「上水樋仕様」の古地図が農大の図書館にあることがようやく

に到り、小日向台の麓に沿って後楽園内を流れ、水道橋附近で大樋をもって神田川を渡り、神田、日本橋、京橋に供水

二上水大伏樋の通路を述べると、神田上水は北多摩郡三鷹村の井頭池に発し、上井草の善福寺池の水を合せて目白台の下

地層図を描いて地膚を露き出している。見ると内幸町側の断面に、そこだけ大きなカンヴァスが懸けられてあるので、思わず

そのカンヴァスの裏には、新宿の地下道のような古色蒼然たる暗道の入口が、欠伸でもする

いうから、敵も味方も一緒くたになって溝板を蹴返しながら小川町まで駆け出した。あたしだけはうまい工合に隅田公園まで辿りつきましたが、見る

銀座四丁目、新橋駅北口、溜池、四谷見附、九段上、小川町、呉服橋を経て再び銀座四丁目に至る。この大円周上には三十二の哨所

午前三時、四丁目の交叉点に立って新橋の方を眺めると、街燈の光も淡くほのかに、銀座の峡は深沈

月二日の午前三時半ごろ、酔歩蹣跚として、新橋から山手へ帰ろうとされた方々、あるいは、タキシーによって銀座四丁目を

は赤十字社の病院自動車を六、七台待機させ、大手町側の横通りには防弾衣をつけた警官を満載した四台の

附近で大樋をもって神田川を渡り、神田、日本橋、京橋に供水し、日比谷門下の地下を通り数寄屋門附近で濠に達する。

入れば、一度も地上に現われることなくして、一方は京橋、日本橋を経て小日向台町まで、一方は虎の門を経て四谷大木戸の

に沿って後楽園内を流れ、水道橋附近で大樋をもって神田川を渡り、神田、日本橋、京橋に供水し、日比谷門下の地下を通り