佐渡 鎌倉 筑波 牛込 琉球 九州 京極 江戸 熊野神社 蝦夷 高松 松山 護国寺 神田 浅草 日本橋

「うむ、知っておる。伊予松山の八百八狸、佐渡の団三郎狸……讃岐の禿狸といえば、大した顔だ」

と陽が暮れかかると、草のあいだでテコメン舞か正殿鎌倉によく似たなんともおもしろい狸囃子がテンテテンテケレツとはじまる。

師走からこのかた湿りがなく、春とはほんの名ばかり、筑波から来る名代の空ッ風が、夕方になると艮へまわり、梢おろしに

「牛込矢来の少しさき」

の小旦那といった風体で、結城紬の藍微塵に琉球の下着、羽織は西川という堅気で渋い着つけ。

相棒は、九州あたりの浪人くずれで、雷土々呂進。このほうも、あっさり縮めて、とど助

きょうは正月の十日で、金比羅まいりの当日、名代の京極金比羅、虎の御門そとの京極能登守の上屋敷へ讃岐から勧請した金比羅

「麻布六本木の京極の下屋敷の金比羅様もなかなか繁昌するそうだから、そっちへ廻ってみましょうか

鉛被せがつかわれるんですが、そりゃア、どうやらみんな江戸から流れ出して行くのらしいんです」

熊野神社のそばまで来ると、暗闇の中から、五音をはずした妙なふくみ声で

どう渡って来たのか、蝦夷から来た『えぞたぬき』という変った狸がこの原へ住みつき、毎夜奇妙

ないから、白金へまわって、ここもやっぱり金比羅勧請の、高松の松平讃岐守の上屋敷。植木の露店なども出て、たいへんな人出な

「うむ、知っておる。伊予松山の八百八狸、佐渡の団三郎狸……讃岐の禿狸といえば、

「おう、そりゃア大変だ。すると、護国寺のへんですか」

護国寺のわきを入って豊島ガ岡、奥深い森につづいた茫々の草原の入口

へやって来たのが、もとは顎十郎の配下、神田のひょろ松。アコ長の顔を見るより懐しそうに走りよって来て、

ているのは、実はアコ長ととど助、それに神田のひょろ松の三人。

山の手はもちろん、はるばる日本橋、浅草のへんからも弁当持ちで老若男女がつめかけ、この広い原っぱは身動きも出来ない

山の手はもちろん、はるばる日本橋、浅草のへんからも弁当持ちで老若男女がつめかけ、この広い原っぱは身動きも