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柚子が浸礼を受けることにしたのは、道灌山の崖下にある古ぼけた木造の教会で、約束の時間に先方へ行くと、

防暑服にスラックスという恰好で、前ぶれもなしに柚子が丸の内の会社へやってきた。

「ロバート・チニー……フランス系のカナダ人、香港で捕虜になって、こっちへ送られてきた。君はいちど顔を

ないだろうか……話をきいてみると、ロバート君が横浜へ荷役に行っていた間、たがいにチラと眼を見あわせたいだけのため

の娘を連れて、茨城県の平潟へ疎開し、そこから新潟、また東京と、いつ見ても、ズボンのヒップに泥がついてい

俘虜収容所には、分所といって、日立と長野と新潟に支店のようなものがある。うちの工場へ派遣所長になって

へ通っていたらしいが、ロバート君は、そこからまた新潟の分所へやられ、そこで病気になって、東京へ帰ってきた

見てあげなければならない病気の友達があって、いま新潟に来ているという便りをよこしたが、三月のはじめごろ、ひどく

兄の細君は、代々、京都のＮ神社の宮司をしている社家華族からきたひとで、柚子の

、東京俘虜収容所には、分所といって、日立と長野と新潟に支店のようなものがある。うちの工場へ派遣所長に

連れて、茨城県の平潟へ疎開し、そこから新潟、また東京と、いつ見ても、ズボンのヒップに泥がついていた。そう

来たマダム・チニーというひとだ。五日ばかり前に東京へ着いて、いまこのホテルにいる」

くれというんだな……ご承知のように、東京俘虜収容所には、分所といって、日立と長野と新潟に支店の

また新潟の分所へやられ、そこで病気になって、東京へ帰ってきた」

便りをよこしたが、三月のはじめごろ、ひどく憔れて東京へ帰ってきた。

、四月十三日、夜の十一時四十分、大塚から高円寺まで焼かれた空襲の最中に息をひきとった。死ぬ二日前、洋銀

経て、四月十三日、夜の十一時四十分、大塚から高円寺まで焼かれた空襲の最中に息をひきとった。死ぬ二日前

柚子は麻布霞町の家から都電で品川まで来て、川崎行のバスに乗るから、当然、大森海岸で降りるわけ

「明日から千駄ヶ谷へ来なさい。女中より先に起きて、家のことをするんだ。

ごきげんよろしう、と二人の従妹の手をひいて、サッサと上野から発って行った。