悪の花束 / 久生十蘭
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なかった。対談中、偶々、拳銃の話が出、最近ロンドンで手に入れたブルネーの拳銃を出してみせたが、突然、暴発し、
六月のはじめ、ロンドンへ行って、消音装置のついた拳銃を集めて送れという指令があった
た拳銃を集めて送れという指令があった。早速、ロンドンへ行き、拳銃を七種ばかり買いこんで巴里へ送った。ベラールの猟館の
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、四人ばかりの友達を誘って、事件の前々日からブルターニュの領地へ帰り、十六日までそこの猟館に滞在していた。同行
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新航路開発の豪奢な披露宴をやっている。海底電信でシドニーの警察に身元調査を依頼し、欧州全都市の警察へ指名手配を出した
である。ヘイーンズはA・M・S汽船会社の重役でシドニーに現住している。ベラールがシドニーの「紳士録」から選んで置いたものだっ
S汽船会社の重役でシドニーに現住している。ベラールがシドニーの「紳士録」から選んで置いたものだった。
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春、早々、エジプトのカイロのさるホテルの支配人に、ジョルジュ・グランヴィルという男がいるという情報が入っ
が入った。今度こそはというので、意気込んでカイロへ駆けつけた。
日の朝、ホテルから逃げだしたりしなかったら、いやまた、カイロのホテルの支配人が、グランヴィルという名でなかったら、この事件は、これほど
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濠洲汽船の代表社員というのは嘘でない。ジェノア、ナポリ、マルセーユなどの一流ホテルに泊って、新航路開発の豪奢な披露宴をやって
、コロンボで英国船に乗換え、二月二十六日の日没後にナポリで下船し、「ホテル・カルディナーレ」で先着の兄と落合うことになるので
ので、違背なく兄の命令にしたがい、予定の日にナポリに着いて、兄から一切の事情を明かされた。兄弟はホテルの一室に
まず手始めにヘイーンズを伊太利のナポリへ連れて行った。試みに「ホテル・カルディナーレ」へ泊ってみた。帳場
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エドモンドは兄の指定どおりに南仏のニースへ行き、台所つきの日貸しの貸別荘を借りて、第一段の行動に
モナコに近いニースは、あたかも謝肉祭の真最中で、仮装の男女が市中に踊りまわっている。
でいるのを見さだめてから、大急ぎで扮装を解除し、ニースでやったように着ていたものを残らず焼いた。「海運界の
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て歩き、独逸へ入って、バヴァリアからザクセンを廻り、とうとうベルリンにまで足を伸ばしたが、これはまったくの無駄骨折で、なんの得るところ
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Gorron〕 はオウブ県ノジャン警察署の刑事を振出しに、巴里警視庁捜査局の第一課長から司法監察官になり、一九二六年に隠退
日の共和祭が終ると、みな海や山へ出掛け、巴里が空になってしまった。議会も休会になり、バルトウ氏の捜査に
「今日の巴里の新聞で、レオン・バルトウ氏の行衛がまだ判らないという記事を読ん
が、思いもかけない反応があった。ベラールの弟が巴里で詐欺事件を起したときの被害者の一人が、これはエドモンド・ベラールの
エドモンドは巴里近郊のホテルでつかまえた。エドモンドが「ジェームス・ヘイーンズ」と同一人物だった
纒ったところで、今後の通信の方法をきめ、ベラールは巴里へ帰った。
に使って宴会騒ぎをしているうちに、このニュースが巴里へ伝わり、いろいろな関係から問合せがきた。この辺の動静を、毎日
た。早速、ロンドンへ行き、拳銃を七種ばかり買いこんで巴里へ送った。ベラールの猟館の広間の壁に嵌入していた拳銃
へ出て来いという電報があって、ジェームス・ヘイーンズの巴里入りとなり、企画通りの終幕を出した。
巴里の地下鉄の第三番線は、西北の旧市門から出て中央の繁華街
の天罰のようなもので、レーノォのように、毎日、巴里の市中をフラフラ泳ぎまわっている男には、三週間前の午後の「
いかにもつまらないので、そのまま巴里へ引返すつもりだったが、煙草の見本表などを持っているところを見る
逃亡したという通報があった。聞いてみると、巴里の北停車場前のホテルでやった手口とよく似ている。こんどこそ追い詰め
中に、当人の写真が入っていたが、それは巴里から逃げだしたグランヴィルとは、似ても似つかぬ、五十ばかりの老人であっ
にも来ませんでした。なんでも、その後、巴里へ行ったということですが、なにをして暮らしているのやら知り
、昨年の春、とうとう窃盗かなにかで捕まり、いま、巴里市外のサントアンの刑務所にいるそうです」
ですが、あれの本当の名はギュイヨーム(Guillaume)です。巴里では、ルイなどと言っているそうですが、平気で偽名でもなん
はるばる加奈陀くんだりまで追い詰めたところで、当の男は、巴里市外の刑務所にいると聞いて腰をぬかさぬものは、まずあるまい
すごすご汽船に乗って、巴里へとってかえし、サントアンの刑務所へ行ってみると、ルイという名で
年ほどの間に、五十七回も職業を変え、最後に巴里へ行ったときは、陶器の欠継ぎをやっていた。古陶器や