ロンドン 軽井沢 土浦 バタヴィア リヨン マニラ パリ 神戸 金沢 東京 上野 お茶の水 三鷹 新宿 大久保 新大久保 目黒

やってきた。伊沢とおなじころ、外務省の書記生でロンドンにいたが、牧野義雄に啓発されて画道にうちこみ、外交官の未来を

わめく木の芽かなってのは、子規の句だったか。軽井沢などに住んで、半月も青葉にかこまれて暮していると、むしょうに赤い

「土浦のなんとかいう寮に、ジャワやスマトラから日本人を追いかけてきたインドネシアや

「土浦の花嫁寮に、ジャワからおれの知人の娘がきている。それに紹介

「バタヴィアのチプナン刑務所へ送られたことは聞いたが、間もなく僕の部隊は

た伊沢の細君の安芸子、須田理学士、貿易再開で近くリヨンに行く森川組の笠原忠兵衛、シンガポールの戦犯裁判で、弁護団側のマレー語の

「マニラのポゥロ大学の八百人の非戦闘員虐殺、ラグナのカランパノの幼児虐殺、パタネスの

島の暴民だが、ゲリラを指揮しているのは、マニラの知識的な上層部だということがわかっている。こういう客観情勢に

経歴を伏せて、戦犯の追及からのがれることができた。マニラの比島戦犯裁判の過程にはいくどとなく山川の名が出たが、

「テット・スキッパの『蝶』だ。あのころパリにいた連中は、忘れられぬ思い出をもっているはずだ」

「あのころ、パリに遊びに来ていた豊沢大掾がこれを聞いて、河東か荻江のウマ味

啓発されて画道にうちこみ、外交官の未来を投げて、パリの貧乏絵描きの仲間へ入りこんでしまった。帰朝する途中、シンガポールや海防で南方

それらが東京で手に入らぬときは、姉がわざわざ神戸のクーン・アンド・コモルまで買いに行った。

、ジャワの花嫁、百何人かにまじって日本へたどりつき、神戸の田辺の寮をぬけだして、一人で東京へやってきた。山川は

月、一番早いリバァティで復員し、二十三年の春まで、金沢の白雲荘ホテルで悠々自適しながら、比島裁判の進行を注視してい

はモリヌウの「ヴェルゥ」ときまっていて、それらが東京で手に入らぬときは、姉がわざわざ神戸のクーン・アンド・コモルまで

東京裁判が最終論告の段階に入り、横浜裁判と平行して、俘虜部門の

という娘が、山川の後を追ってきて、いま東京にいる」

日本へたどりつき、神戸の田辺の寮をぬけだして、一人で東京へやってきた。山川は、母がどうの、姉がどうのと

「上野へおやりになったら？」

「上野へやろうと思いましたら、設備がないから、もうすこしそちらに置いてもらい

「上野へやるあいだ、私がお預りしましょうか。私に馴れているようです

が、そのころ、山川が、混血児じみた若い娘と、お茶の水の焼跡を歩いているのを見たというものがあった。

、馴れない気候にやられて、倒れてしまった。いま三鷹の施療ベッドにいるが、絵にも描けないような惨状なんでね

三鷹の駅から、土堤について行く。雑木林の繁った両岸の間を、

そういって、新宿で岩城と別れた。

二月五日の午前八時ごろ、新宿、新大久保間の、いわゆる魔のカーブで山川が省線から振落されて

車輪に接触して土堤下へ跳ねだされたものらしく、大久保百人町の空溝のなかで死んでいた。

二月五日の午前八時ごろ、新宿、新大久保間の、いわゆる魔のカーブで山川が省線から振落されて不慮の死

たが、それも五月で結了となったので、目黒の自宅へ帰った。白雲荘に滞在中、山川の家とはたえず