モスクワ ロンドン アルプス チュニス リヴァプール カイロ ベルリン マルセイユ 巴里 東京

に独領へ辷りこめるかどうか、あやしくなってきた。モスクワの十時間の停車には身を削がれるような思いをし、夕方の五

も年がちがう日東商事の三池高孝と結婚させられ、ロンドンの支店長になった三池といっしょに英国に行ったが、この春、亡父の

「倫子さん、ロンドンへ帰るのかい」

「三池は倫子を連れて、昨日の十七時の便でロンドンへ帰ったらしい。いずれ、こうなることはわかっていたが、こんな状態で

音が聞えてきた。雪解けの山々からおしだしてきたアルプス・ラインの流れが、さわがしく波立ちながら、一キロほど向うで暗いボーデン湖に注ぎこんで

は、ポーランドとよく似ているよ……白耳義の屑鉄もチュニスの燐鉱も、いま、おれがやっている仕事は、骨を折ってやれば

倫子は豊川のほうへ顔を寄せて、リヴァプールへ着くまでに、戦争がはじまるようなことがないだろうかと聞いている。

ので、伊太利人やスペイン人と十人ばかり組になって、カイロに一晩泊って、翌日、ポートサイドへ行ったら、荷物だけが汽車で送られ

と、巴里に残っていた日本人は、大使館の命令でベルリンに集結したが、二十年の一月匆々、東西から敵軍が迫ってき

年の一月匆々、東西から敵軍が迫ってきて、ベルリンの町のいたるところにバリケードが築かれはじめた。

が傍若無人に低空射撃を加えるようになり、ソ連軍はベルリンの西六十粁のオーダー河の線まで近づき、ベルリンもあぶなくなったので、

軍はベルリンの西六十粁のオーダー河の線まで近づき、ベルリンもあぶなくなったので、南独逸のバスガスタインに移った。

クレーデル号は、九月一日前後にマルセイユに寄港するはずだったが、ちょうどフランスの対独宣戦布告とかちあい、ブレーメン号など

、観兵式を見ている最中だよ。七月十四日の巴里の観兵式も、たぶん、これが最後になるのだろう」

もう時期の問題だ。今日、チャーチルと英国の陸相がわざわざ巴里へやってきて、観兵式を見ている最中だよ。七月十四日

て戦時資材の調査にヨーロッパへ派遣され、間もなく巴里駐在員になった。

三池の焼餅と早合点は有名なもので、巴里へ遊びに行った倫子の帰りが一日でも遅れると、クロイドンから旅客機で

のフォードを買って、二十日目に、やっとのことで巴里に辷りこんだ。

巴里に帰りついた当座、豊川はいそがしそうにしていたが、そのうちに

「三池は巴里へ来ているんだろうが、倫子をつかまえて出さないところを見ると、

独逸の旗色が悪くなると、巴里に残っていた日本人は、大使館の命令でベルリンに集結したが、

帰るはずのない豊川が東京にいるのも、不縁になったとも聞かない倫子が、ずるずると実家