雪中行 小樽より釧路まで / 石川啄木
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橇を牽いて来た。車夫が橇を牽くとは、北海道を知らぬ人には解りツこのない事だ。そこ/\に朝飯を済まし
に本を見始める。先生に侍して、雪に埋れた北海道を横断する自分は宛然腰巾着の如く、痩せて小さい躯を其横に据ゑ
此辺は、北海道第一の豊産地たる石狩平野の中でも、一番地味の饒かな所だ
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此辺は、北海道第一の豊産地たる石狩平野の中でも、一番地味の饒かな所だと、傍人はまた教へて呉れた
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は、名物の煉瓦餅を買ふ気にもなれぬ。江別も過ぎた。幌向も過ぎた。上幌向の停車場の大時計は、午後の三
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札幌に着いて、東泉先生は一人下車せられた。明日旭川で落合ふといふ約束なのである。降りしきる雪を透して、思出多き木立
(第二信) 旭川にて
旭川に下車して、停車場前の宮越屋旅店に投じた。帳場の上の
にと、町見物に出かける。流石は寒さに名高き旭川だけあつて、雪も深い。馬鉄の線路は、道路面から二尺も
を訪ねて留守に逢ひ、北海旭新聞社に立寄つた。旭川は札幌の小さいのだと能く人は云ふ。成程街の様子が甚だよく札幌
這入つた。薄暗くて立ち罩めた湯気の濛々たる中で、「旭川は数年にして屹度札幌を凌駕する様になるよ」と気焔を吐い
来られた。広い十畳間に黄銅の火鉢が大きい。旭川はアイヌ語でチウベツ(忠別)と云ふさうな、チウは日の出、ベツは川
、日の出る方から来る川と云ふ意味なさうで、旭川はその意訳だと先生が話された。
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汽笛が鳴つて汽車はまた動き出した。札幌より彼方は自分の未だ嘗て足を入れた事のない所である。白石厚別
て留守に逢ひ、北海旭新聞社に立寄つた。旭川は札幌の小さいのだと能く人は云ふ。成程街の様子が甚だよく札幌に似
のだと能く人は云ふ。成程街の様子が甚だよく札幌に似て居て、曲つた道は一本もなく、数知れぬ電柱が
の濛々たる中で、「旭川は数年にして屹度札幌を凌駕する様になるよ」と気焔を吐いて居る男がある。「戸数
夜に入つて東泉先生も札幌から来られた。広い十畳間に黄銅の火鉢が大きい。旭川はアイヌ語
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小樽より釧路まで
伴れて乗つて居る。新聞を買つて読む、札幌小樽の新聞は皆新夕張炭鉱の椿事を伝へるに急がしい。タイムスの如きは、死骸
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日本一の大河が雪に埋れて見えぬと聞いたなら、東京辺の人などは何といふであらう。