茗荷谷 伝通院 奈良県 大塚 東京 神田 飯田橋

でいたが、すぐ雨になって私の住んでいる茗荷谷の谷間を掻き消そうとでもするように降って来た。私は平生のよう

私は若い友達を伴れて再び藤坂をあがって伝通院の方へと歩いた。それは砲兵工廠の火を見るためであった。

た大きな建物の簷が僅かに見えていた。それは奈良県の寄宿舎であった。寄宿舎の右寄りの上にも二軒の二階家が

時、また地が震うて来た。三四人の者は奈良県の寄宿舎の下の高い崖の方へと往きかけた。寄宿舎の庭なら安全

窓の家は下宿屋であった。下宿屋の上の家並は大塚の電車通りに沿うた人家で、総門の右側には雑貨店をやっている

和智君は東京から帰って朝鮮あたりで新聞記者をしていたと言った。

神田方面が火事になったとその女が言った。私は寺の門を

「神田方面はひどい火事ですね、砲兵工廠も燃えていますよ」

を渡って甲武線の線路の上に出た。九段から神田方面にかけて一面の火の海で、中でも偕行社らしい大きな建物

私たちはそれから飯田橋を渡って甲武線の線路の上に出た。九段から神田方面にかけ