八幡宮 薩摩 銚子 池上本門寺 沙河 松山 品川 東京

の大木が一団となっているところがあった。そこは八幡宮の境内であった。広巳はそこへ入った。華表のしたに風船玉売

女があった。広巳の感情はすぐやわらいだ。広巳は八幡宮の前へ往っていた。

たのだ、西郷さんの戦に、熊本城に立て籠って、薩摩の大軍をくいとめた谷干城さんも、安井の門にいたのだ、私

長吉はちょっと黙った。お杉は銚子の酒を注いだ。

揉あげは手をたたいた。そこは池上本門寺の丘つづきになった魁春楼と云う割烹店の離屋で、崖の上に

東郷大将か」物の影を追うようにして、「沙河の戦は、面白かったなあ、俺もあの時、鵜沢連隊長殿と戦死するところ

で、丹前は岡本と云う三百代言あがり、揉あげは松山と云って赤新聞の記者あがり、角刈は半ちゃんで通っている博徒であっ

揉あげの松山はいい気もちに酔っていた。角刈の半ちゃんは笑っていた。

「佳い目が出る、おい、松山、佳い目が出る、俺はそんなことは知らねえや、ぜんたいそりゃ何だ

松山はまた何か揮るような恰好をした。

松山は大声に笑った。

位の眼の澄んだ※な女であった。岡本は松山をちらと見てにやりと笑った。

「どうだ、松山、あの堅蔵が、そんなことをやるのかい」

松山もにやりと笑った。

松山はまぜかえした。

そこへ襖が啓いて角刈の頭が見えて来た。松山は待っていた。

松山はにやりと笑った。

松山はだまって半ちゃんといっしょに岡本の顔を見ていた。岡本は

松山も好奇心に燃えていた。

半ちゃんと松山は、岡本の意図にはっきりしないことがあったが、聞きかえすことができ

半ちゃんは出て往った。岡本は松山を見た。

松山は起って障子を締めて出て往った。岡本はそれから盃を持っ

松山が岡本の顔を見た。松山は岡本の顔色によって事の成否を知ろうとしていた。半

松山が岡本の顔を見た。松山は岡本の顔色によって事の成否

岡本は心もちよさそうに酒を飲んだ。松山は岡本から女のことを聞きたかった。

松山が口を入れた。

松山も同感であった。

もできなかった。半ちゃんは己の席へ帰った。松山は半ちゃんの席へ帰るのを待っていた。

て出て往った。岡本と松山は盃を持った。松山は岡本に眼くばせをした。

半ちゃんは起って出て往った。岡本と松山は盃を持った。松山は岡本に眼くばせをした。

松山が笑った。

広栄は婢の手から名刺を執った。名刺には松山良蔵としてあった。

「松山良蔵、どんな男だ」

をあわせなくてもよかった。客はあの匪徒の中の松山と半ちゃんであった。広栄は客座敷へ入って往く二人の横顔を

松山と半ちゃんは床の方を背にして胡坐をかいていた。

松山はすましていた。

広栄は、後の詞が出なかった。松山はその顔をじろりと見た。

「だめだ」松山は叱りつけた。「そんなことを云っても、種がちゃんとあがってるのだ

か、それじゃ、その証拠を見せてやろう、驚くな」松山は右の袂へ手をやって半紙に書いた物を二枚出して

松山はそのままそれを広栄の前へ投りだした。広栄はしかたなしに拾っ

て次の室へ往った。その時客座敷では、松山が黙りこんでいる広栄を叱りつけていた。

「待て」松山は絹を裂くような声で押えつけて、「細君もよく調べる、よく調べる

広栄はもう詞が出なかった。松山はたたみかけた。

松山はじろりと定七を見た。

松山は態度をやわらげた。

の前を往きすぎると、半ちゃんが右側を歩いている松山の傍へ寄って往った。

山田を出て大森の方へ向って歩いていた。松山は蝙蝠傘をさし、半ちゃんは紺蛇目をさしていた。絹糸のよう

松山と半ちゃんは、山田を出て大森の方へ向って歩いていた

松山は笑った。

会社員風の洋服男が来て擦れちがおうとしていた。松山は叱と云って半ちゃんに注意した。

松山は周囲に注意した。店員風の壮い男と、会社員風の洋服

半ちゃんは口をつぐんで苦笑した。松山は話をかえた。

松山と半ちゃんは、その傘の中を潜って一跨ぎの泪橋を渡った

まもなく、円木棒は忽ち半ちゃんをなぎ倒し、ふりむいた松山の右の肩をしたたかに撲りつけた。円木棒は広巳であった。

なかった。広巳は円木棒を揮って松山に躍りかかった。松山はその勢に辟易して後すさりした。半ちゃんは半身を起した

どうすることもできなかった。広巳は円木棒を揮って松山に躍りかかった。松山はその勢に辟易して後すさりした。半ちゃん

の胴に来た。半ちゃんはまた倒れてしまった。松山は眼を怒らすばかりでどうすることもできなかった。広巳は円木棒を

広巳はどこまでもと松山にせまった。松山はとてもかなわないと思ったのか、くるりと体を返して逃げようとし

広巳はどこまでもと松山にせまった。松山はとてもかなわないと思ったのか、くるりと体を

棒を揮った。円木棒は松山の背に当った。松山は前方向けによろよろとなって倒れてしまった。

広巳は飛びかかって円木棒を揮った。円木棒は松山の背に当った。松山は前方向けによろよろとなって倒れてしまった

広巳は松山を捨ててふり向いた。半ちゃんが起きあがって組みかかろうとした。

右側の民家の背景になった丘の上から、左側の品川の海へかけて煙のような靄が和んでいて、生暖かな物

広巳は品川の方からふらふらと歩いて来た。東海道になったその街には晩春

「品川ですね」

に飯櫃の蓋を除って飯をつけて喫いだした。品川の妓楼へ一泊した広巳は、家へかえるのが厭だから、

「昨夜は、品川ですか」

「品川でしょう、それとも大森」

「疲れるものかい、叔父さんは、昨夜、品川のお妓楼へ往ったのだい」

「そうか、そうか、叔父さん、品川へ往ったのか」

「往ってたのだあい、品川のお妓楼へ往ってたのだあい」

「品川さ」

「見た、何時か品川の帰りに、あすこの八幡様へ入ってみると、天水桶さ、あの拝殿

三人は酒になった。三人は品川大井大森方面を縄張にしている匪徒で、丹前は岡本と云う三百代

「俳優だな、したっぱの、品川あたりで見かけたことがあるのだ」

の山田稔と云うのは、本人が書いたのだ、品川にごろごろしてる馬の脚だ、それを婆さんが執りもって、ふざけた真似

も臨む日のような姿をしていた。広巳が品川の警察へ自首して往くところであった。

「作る田がないから、東京へ来て強請をやってるだろう」

もそのあたりにはいられなくなるし、馬の脚は、もう東京附近では、馬の脚もできないことになるぞ」