立山の亡者宿 / 田中貢太郎
地名一覧
地名をクリックすると地図が表示されます
「私は江戸から来た」
「どうして、江戸の女子は※でございますから」と、云って主翁は急に用を
…乃公は、先月死んじゃった女房に逢いたくなって、江戸からわざわざやって来た者だが、考えてみれば、此方が痴さ、
で、別に好い芽も出ないだろう、これから乃公と江戸へ往って、いっしょに暮そうじゃないか」
が恐ろしかった。それに死んだ女房の姿を見にわざわざ江戸から来る程の人だから、悪い薄情な男でもないと云うような考え
には汗まみれになった道中着と脚絆、股引、それから江戸下谷長者町小八という菅笠があった。
客は江戸の下谷長者町の小八と云う者であるらしい。主翁は急に旅
者であるらしい。主翁は急に旅装束をして江戸に向けて出発した。
雇ってある婢を伴れだして、逃げましたから、今日江戸へ着いて掛合にあがりますと、大勢の朋友といっしょに酒を飲んでい
地名をクリックすると地図が表示されます
立山の亡者宿
「この立山には、地獄と極楽があって、亡者が皆集まっておりますから、逢い
を受けて※れたようになった空の下に、立山の主峰が尖んがった輪廓を見せていた。
小八はその前日帰ったところであった。立山へまで死んだ女房の姿を見に往っていた者が、他の※
小八はまた立山の一件を話して、
「私は、立山の宿屋の主翁でございますが、貴下の店子の小八さんが、この
ございますが、貴下の店子の小八さんが、この間立山へ来られて、大金をかけて雇ってある婢を伴れだして、逃げまし
地名をクリックすると地図が表示されます
に女を己の処へ伴れて来た。小八は下谷長者町の裏長屋に住んでいる消火夫であった。女は背の高い
は汗まみれになった道中着と脚絆、股引、それから江戸下谷長者町小八という菅笠があった。
客は江戸の下谷長者町の小八と云う者であるらしい。主翁は急に旅装束
夕方、下谷の小八の家では五六人の者が集まって来て酒を飲ん