九州 渥美半島 東照宮 妙義山 神戸 東京

亡くなつた神戸の叔父が非常に信仰したところで、九州へ歸省の途中彼を訪ふごとに、何故御近所を通りながら參詣せぬ

山の尾根から傳つて歩いてゐると、遠く渥美半島が見えた。またその反對の北の方には果もなく次から次と蜒

してゐたのであつた。聞けばこの上には東照宮があるのみで、お寺はもう無いのださうである。もと本堂があつ

喜びながら手荷物を其處に預け、足ついで故その東照宮までお參りして來ようと再び石段を登つて行つた。大きくはないが

或日私は案内せられて東照宮の裏手から山の頂上の方に登つて行つた。前にも言う通りこの

樹木のたちこんだ岩山が眼の前に聳えてゐた。妙義山の小さい形であるが、樹木の茂みが山を深く見せた。宿を外れると

驛下車、稻荷樣に詣でた。此處は亡くなつた神戸の叔父が非常に信仰したところで、九州へ歸省の途中彼を訪

神經衰弱がひどくなつたと言つて勤めさきを休んで東京からＭ――君がやつて來た。そして私の家に三四日寢轉