樹木とその葉 06 四辺の山より富士を仰ぐ記 / 若山牧水

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地名一覧

箱根

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そして寧ろ偶然に足柄と箱根との中間にある乙女峠を越えようとしてその願ひを果したのであつ

てその願ひを果したのであつた。私はその時箱根の蘆の湖から仙石原を經て御殿場へ出ようとしてこの峠にか

乙女峠

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そして寧ろ偶然に足柄と箱根との中間にある乙女峠を越えようとしてその願ひを果したのであつた。私はその時箱根

出ようとしてこの峠にかゝつたのであつた。乙女峠の富士といふ言葉を聞いてはゐたが實はその時極めてぼんやりとその

嶮しかつたが、思つたよりずつと近く峠に出た。乙女峠の富士といふ言葉は久しく私の耳に馴れてゐた。其處の富士を

富士を語るに足らぬとすら言はれてゐた。その乙女峠の富士をいま漸く眼のあたりに見つめて私は峠に立つたのである

乙女峠の富士は普通いふ富士の美しさの、山の半ば以上を仰いでいふの

た富士もまた見ごとなものであつた。愛鷹からと云ひ乙女峠からと云ひ、贅澤を言ふ樣だが實は少々近過ぎる感がないでは

雁坂峠

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に擴がつた裾野の大きさはまたどうであらう。東に雁坂峠足柄山があり、西に十里木から愛鷹山の界があり、その間に抱く

田子の浦

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海岸には沼津の千本松原からかけて富士川の川口の田子の浦、少し離れて三保の松原も波の間に浮んで見える。明るい大きな眺めで

天城山

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丁度の見頃だとおもふ距離をおいて仰がるゝのはこの天城山からであつた。

伊豆

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て見た富士を記してこの文を終る。これは曾て伊豆の西海岸をぼつ/\と歩いて通つた紀行の中から拔いたもの

日本アルプス

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一體に流行を忌む心は、もう日本アルプスもいやだし、富士登山も唯だ苦笑にしか値しなかつた。與謝野寛さんだ

富士山

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の、他奇ない山であるが、その峯の眞上に富士山が窺いてゐる。

辛うじて頂上に出た。案の如く富士山とぴつたり向ひ合つて立つことが出來た。然し、最初考へた

、大きく眞白く、手に取る樣な眞近な空にわが富士山は聳え立つてゐるのであつた。しげ/\とそれを仰いで坐つて

眞裸體の富士山を見ようといふねがひは前の愛鷹山で見ごとに失敗した。然し、何處

富士登山

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に流行を忌む心は、もう日本アルプスもいやだし、富士登山も唯だ苦笑にしか値しなかつた。與謝野寛さんだかゞ歌つた「富士

金時山

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通り合せてはといふ懸念から路を離れて一二町右手の金時山の方に登つて、枯芒の眞深い中に腰を下した。富士よ

御前崎

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には駿河灣が光り輝き、その左に伊豆半島、右手に御前崎が浮び、山の麓の海岸には沼津の千本松原からかけて富士川の

足柄

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そして寧ろ偶然に足柄と箱根との中間にある乙女峠を越えようとしてその願ひを果したの

愛鷹山

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と走る間、汽車の右手の空におほらかにこの愛鷹山が仰がるる。謂はば蒲鉾形の、他奇ない山であるが、その峯の

いま私の借りて住んでゐる家からは先づ眞正面に愛鷹山が見え、その上に富士が仰がるゝ。富士といふと或る人々からは如何に

愛鷹山は謂はゞ富士の裾野の一部にによつきりと隆起した瘤の樣

に亙つて立つてゐるものと想像してゐたこの愛鷹山には、思ひのほかの奧山が連り聳えてゐるのであつた。沼津

眞裸體の富士山を見ようといふねがひは前の愛鷹山で見ごとに失敗した。然し、何處かでさうした富士を見ることが

松山

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時間を其處で休んで歸りかける、歸りみちにはあたりの松山で初茸でも取つて來やうといふ樣なことであつた。ところが