樹木とその葉 07 野蒜の花 / 若山牧水
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にゆかず、大正五年の夏から私だけ上京して本郷の下宿に住んで原稿などを書いてゐた。その間に出來た歌を
だものとしてこの本を振返ることが出來る。これは本郷邊の印刷所に勤めてゐた青年が(その以前籾山書店にゐた關係から
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同じく三浦半島北下浦の漁村で詠んだ歌が大半を占め、東北地方の旅行さきで出來たものが加はつてゐる。同じ三浦半島で詠んだもので
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『獨り歌へる』は當時名古屋の熱田から『八少女』といふ歌の雜誌を出して中央地方を兼ね相當
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て出版したのが『路上』である。これは當時小石川の竹早町に主として古本を買つてゐた博信堂といふ店の
みなかみ』の原稿を持つて上京した私は、程なく小石川の大塚窪町に家を借り、一時信州の里へ歸してあつた妻子(
たものであつた。當時妻も恢復して上京し、小石川の金富町に住んでゐた。
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出た時に金拾五圓也を貰つて私は甲州の下部温泉といふに出向いた事を覺えて居る。歌集で金を得
が戀しく、三四年間で日本全國を※るつもりで先づ甲州に入り、次いで信州に※つた。かれこれ半年もそんなことをしてゐるうちに
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、それをまたその愛人だかゞ持ち出し、思ひがけない何處か長崎あたりへ行つてゐるといふ話をあとで聞いた。
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にそれを被せるのは無理である。早い話が此頃東京で二三囘引續いて會合があり、出席者はいつも五十人前後で
やめて眠つてゐる私を寫生してしまつた。サテ東京へ引上げようとなつて宿屋の拂ひが足りず、その繪を其處に置い
※つた。かれこれ半年もそんなことをしてゐるうちにまた東京が戀しくなつて歸つて來て出版したのが『路上』である
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』に就いても思ひ出がある。喜志子と初めて同棲して新宿の遊女屋の間の或る酒屋の二階を借りてひつそりと住んでゐ
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の原稿を持つて上京した私は、程なく小石川の大塚窪町に家を借り、一時信州の里へ歸してあつた妻子(その
大塚窪町に住んでゐる間に妻が病氣になつた。轉地を要するといふ
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した後、琴の音譜の本を出して大いに當て日本橋の方に引越して開業してゐる店から出版したのであつた。
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『寂しき樹木』はその次、巣鴨の天神山に移つた頃、出したものであつた。これはよく『砂丘