青岸渡寺 志摩 熊野 伊豆 大阪 高野山 奈良 京都 和歌山 東京

の大きな神社があり、西國三十三ヶ所第一の札所である青岸渡寺とい古刹もあるのである。併し、御者のわざ／＼斯う訊いたの

日の岬潮岬は過ぎぬれどなほはるけしや志摩の波切は

翌日、山を降りて再び勝浦に出た。そしてその夜志摩の鳥羽に渡るべく汽船の待合所に行つて居ると、同じく汽船を待つらしい人

熊野なる鰹の頃に行きあひしかたりぐさぞも然かと喰せこそ

この正月の事であつた、私は伊豆の東海岸を旅行して二日の夜に或る温泉場へ泊つた。すると、

續いて近頃飛んだそれぞれの人の話が出た。大阪の藝者とその情夫、和歌山の呉服屋、これはまた何のつもりで飛んだか

大阪奈良と答へてゐると、急に途中を遮つて、高野山に登つたらうと言ふ。まことに息を逸ませてゐる。私はもう素直

御事情もおありで御座いませうが、……實は高野山から貴下のお出しになつた葉書で、てつきりこちらへおいでになる事

暫く音信も斷え、行先も不明であつたが、先日高野山から手紙をよこし、これから紀州の方へ行つてみるつもりだといふ事と

月に及ぼうとしてゐるのである。京都界隈から大阪奈良初瀬と※つて紀州に入り込んだ時はかなり身心ともに疲れてゐた。

改めて見返さざるを得なかつた。そして簡單に京都大阪奈良と答へてゐると、急に途中を遮つて、高野山に登つたらうと

既うかれこれ一月に及ぼうとしてゐるのである。京都界隈から大阪奈良初瀬と※つて紀州に入り込んだ時はかなり身心ともに疲れ

男を改めて見返さざるを得なかつた。そして簡單に京都大阪奈良と答へてゐると、急に途中を遮つて、高野山に登つ

の人の話が出た。大阪の藝者とその情夫、和歌山の呉服屋、これはまた何のつもりで飛んだか、附近の某村の

は一日この雨を聞きながらゆつくりと休むことにした。東京の宅を立つたのが先月の八日、二週間ほどの豫定で

た、サ、何卒お二階にお上り下さい、實は東京からあなたを探ねていらした方があるのです、と言ふ。今度は私

眼は妙に輝いて、聲まで逸んでゐる。貴下は東京の人だらう、と言ひながら頭の頂上から爪先まで見上げ見下してゐる。

この頃この熊野を通つて、奈智へ登るといふ事は東京あたりの親しい者の間には前から知れてゐた事實である。誰

「東京では皆さんがえらく御心配で、ことに御袋樣などはたとへ何千圓

か、それでは違ふよ、僕は東京者には東京者だが、そんな者ぢアない、人違ひだ。」

「さうか、それでは違ふよ、僕は東京者には東京者だが、そんな者ぢアない、人違ひだ。」

「旦那は東京の方ではありませんか？」

セルのたて縞を着てゐた）、五月六日に東京を（私は五月八日）出て暫く音信も斷え、行先も