叡山 粟田 比叡 比叡山 京都 東京

青年僧と叡山の老爺

沈み登り下りのみち行を越していまては人のゆくすゑ、粟田』

『歸つたら早速比叡に登つて見給へ、さうしてお爺さんに逢つてよろしく言つて下さい。

『これは面白い、昨日君に話した比叡山の茶店の老爺から何か來ましたよ、また短册かな。』

七年の初夏であつた。私は京都に遊んで、比叡山に登つてすぐ降りて來るといふでなく、暫く滞在したい希望で、山上

、とにかく一身上の事で是非お願ひしたい事があつて京都からやつて來た、といふ事だけは分つた。見ればその額に

京都に在る禪宗某派の學院の生徒で、郷里は中國の、相當の

砂のこまかな波打際に坐つて、永い間、京都のこと、其處の古い寺々のこと、歌のこと、地震のこと、それ

大正七年の初夏であつた。私は京都に遊んで、比叡山に登つてすぐ降りて來るといふでなく、暫く

を擧げた粟田翁であるのだ。その時、山から京都に降りると其處の友だちが寄つて私のために宴會を催して呉れ

のであつた。それらのことを、昨日千本濱で京都附近の話の出た時に、その若い坊さんにしたのであつ

も目的を貫きます、先生が許して下さらねばこれから東京へなり何處へなり行きます、と言ひ張つてゐる。

よく見ると、表は四年も昔に引越して來た東京の舊住所宛になつてゐる。スルト、こちらに越して來てから一度