梓川 上高地 上高地温泉 阿蘇 伊那郡 安房峠 平湯温泉 甲州

を前にしてひつそりと建つてゐた。川は梓川である。

約四里、信州白骨へ通ずるのである。即ち白骨、上高地、平湯其他の諸温泉が相結んで一個の燒嶽火山を圍んでゐる

宿屋の作男を案内として先づ燒嶽のツイ麓に在る上高地温泉に向うた。行程四里、道は多く太古からの原始林の中を通じて

跡があり、再びまた寂び果てた森なかを歩いてやがて上高地温泉に着いた。一軒建の温泉宿はその森のはづれに、山の上

をば今でもうら悲しいまでにはつきりと思ひ出す。この火山は阿蘇や淺間などの樣に一個の巨大な噴火口を有つことなく、山の

元來この温泉は信州といつても重に上下の兩伊那郡及び木曾路一帶、美濃の一部にかけての百姓たちがその養蠶あがりの

この平湯温泉から安房峠といふを越えて約四里、信州白骨へ通ずるのである。即ち白骨、

其處から寒月に照らされながら更に二里の山路を歩いて平湯温泉といふに辿り着いた。此處は謂はゞ飛騨の白骨温泉ともいふべく

嶽穗高嶽を初め、飛騨信州路の山脈、または甲州から遠く越中加賀あたりへかけての諸々の大きな山岳を眺め渡した氣持もまた忘れ