芝浦 深川 浅草 大久保 銀座 月島 東京 永代橋 新大橋 隅田川 京橋

か？」浅野セメントから新大橋をわたり、船頭はも一度芝浦まで歩こうと言うのであった。「まず交番に届けておこうではないか

ほら、あそこに、ほら白い屋根が見えんだろう、そいから深川八幡様だ、あそことあそこの間にあんだけえどなあ……」彼

も焼けちゃった。あたいは死にもの狂いで河にとびこんだ。深川は危ぶねえってんで、ほら知ってんだろう？　東清倉庫に避難

母あの仕事を手伝うもんだ、な、そしたらこんだ浅草へ連れてくからよ」

た。奇妙な性格の元木武夫にぽかんと浮んだであろう大久保彦左衛門の女房が、何かものわかりの鈍いとされている児童の心を

ている伜を思い描き、腹の底から溜息を絞った。銀座では人間の河が舗道を洗っていた。その人波に逆って行く

鉄工場が邪魔になって、よく見ねえや」つづいて月島の方角に面した金網では、じだんだふんでいる子供が今だとばかり

「あたいん家はね、東京市の電気局だよ」と久慈は元気よく金切声をあげた。

風情には、つまり性に合わねえもんで」それでは永代橋から電車に乗ろうという杉本に今度は懇願した。「野郎も毎日歩い

「あっしらは船の商売で――だもんで、永代橋さ戻ってみたらば野郎の姿が見えねえ。はて、らんかんの下に

を出して、つまり天罰ちもんでしょうか？」浅野セメントから新大橋をわたり、船頭はも一度芝浦まで歩こうと言うのであった。「まず

煙は河の向う側から逆にこちらになびいていた。隅田川がその間に白々と潮を孕んでくねっていた。「寒くなって

その工場の黒煙だけは、たくましく京橋方面の濁った空気にとけこんでいた。都会の屋並をなでる煙は河