女肉を料理する男 / 牧逸馬
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人気が荒いので世界的に有名なロンドンの東端区に、ハンベリイ街という町がある。凸凹の激しい、円い石畳の
秋の初めで、ロンドンはよく通り雨が降る。その晩も夜中にばらばらと落ちてきたので、
たこともあるから、ことによると、逃走後ひそかにロンドンへ潜入したのかもしれない。人相書も付随しているので、
だった。宗教的迷執云々は第二にしても、いまロンドンを震愕せしめている「斬裂人のジャック」が、かなり的確な解剖学的
求めがたいのである。「斬裂人ジャック」といえば、ロンドンでは、いや、英国ではだれでも知っている。およそなんらかの
私服刑事をひとり付けてくれる。が、私はいま、このロンドンのイースト・エンドにおける私の経験や観察を述べたり、ここの夜で
もうすっかり冬の化粧をしたロンドンである。一日じゅう離れなかった霧が、夕方ちょっと氷雨に変わったりして
井戸端会議というところだが、英国では、ことにこのロンドンのイースト・エンドあたりでは、山の神連が白昼居酒屋へ集まって、一杯
なにかの理由から、イースト・エンドの売春婦をひいてはロンドン全体を、その人心を、社会を、震撼し戦慄させるのが目的だった
初冬のロンドンには、煤煙を交えた霧の日がしきりにつづく。
円門のようになっている家が多い。このころのロンドンだからあいかわらず霧がかかってはいたが、霧の奥に月のある晩
た犯罪が連続的に行なわれたことがあった。もっとも、ロンドンのほど野性に徹した犯行ではなかったが、同じような性器の解剖が
もちろん自余のことはいっさい不明で、やはり捕まっていない。ロンドンでリッパア事件が高潮に達した時、テキサス州の有力新聞アトランタ・カンステチュウション紙は、
始めたに相違ないと論じたが、その当否はとにかく、ロンドンでリッパア騒動が終塞するとまもなく、その翌年の初夏、同じような
を合するがごときものがあって、ここに当然、ジャックはロンドンにおける最後の犯行後、大西洋を渡って中米に現われたのだと
すればおおいにありそうなことである。はたしてニカラガの犯人がロンドンの屠殺者ジャックであったかどうか――それは、ニカラガでも犯人は捕まっ
氏は、いつ帰ったともなく、まもなく空手でロンドンに帰ってきていた。
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が、即日アンドルウス警部が警視庁を飛び出してそのままサザンプトンからニューヨーク行きの船に投じている。その筋の努力がいかに涙ぐましいものであったか
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このすこし以前、北米テキサス州で、冬から早春にかけて、リッパア事件に酷似した犯罪が連続的に行なわ
ていない。ロンドンでリッパア事件が高潮に達した時、テキサス州の有力新聞アトランタ・カンステチュウション紙は、この黒婦虐殺事件の顛末を細大掲げて