黄昏 / 宮本百合子
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雇人などには隠していた。七月の暑い盛り、根岸に来ると間もなく、彼女は、のぶ子を使にして、手紙に、
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「あのね、おっかさん、大阪の方から何か便りが来て?」
「大阪?」
に先が誰であるか、推察がついた。昨今、大阪で暮しているということだけは、彼女も、去った良人の唯一の消息
大阪の方では、いずれ妻子を持っているのだろうが、どんな暮しをして
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と女中を呼んで、出来た銚子を運ばせた。
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している学校は市ケ谷の方に在った。そこからはるばる下谷まで出かけて来、また麹町まで行こうとする心持を思い遣ると、おくめは
下谷から、麹町まで行く長い電車の間、おくめは、ぽっとして気
下にでも、磁石で自ら方向を覚るように呆然、下谷まで帰って来たのである。
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「麹町まで一寸一緒に来てお貰いしたいんだけれど……」
「麹町へ?」
眉の辺には、明に躊躇の色が漲った。麹町というのは、長女のふさ子の嫁入っているところであった。良人は
方に在った。そこからはるばる下谷まで出かけて来、また麹町まで行こうとする心持を思い遣ると、おくめは、そぞろに可哀そうになって
「麹町から用があるとかいって、参りましたものですから……」
下谷から、麹町まで行く長い電車の間、おくめは、ぽっとして気が弛んだ
けれども、何か、彼女を寡黙にさせた原因が麹町であったのだと察したらしく、米子は、それとなく、おくめ
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「だって、東京へ来て、もう半年にもなるのに、一遍も行かないのは
は勿論、女一通りの遊芸も仕込まれずに、根から東京育ちの相田の家庭に入って、ふさ子が人知れずいかほどの涙を
は、海老原の一家にも好感は抱いていなかった。東京まで来て、また何か云って行ったのだと思うと、おくめ
「先月から東京にいるんですって……」
家で会ったことがあるの。――だから今度も東京へ来たって知らせてよこしたんだわ」
「何をしに東京へ出て来たのだろう――」
祖父の目を盗むようにしては、口実を拵えて東京に来る。そして、何をしているのか、商売の向は一日
彼女と一緒にいた時分から、彼が東京へ来るのは珍しいことではなかった。昔気質の、律気一遍な祖父
東京といえば定って、朝二番の上りで出掛けて行った良人の姿
「東京に出て来たというのも、のぶ子に手紙をよこしたというの
に、よいならよいなりに、直接彼の口から、何故東京へ出て来たのか、何故のぶ子へは便りをしたのか、
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、住所などは書いてよこさないように、必要があったら渋谷の親戚にいる積りで万事取計らってくれるようにということなどを、指図