八丁堀 牛ヶ淵 甲賀町 江戸 大江山 神田 大久保

錢形の平次は八丁堀の組屋敷から歸つて來ると、鼻の下を長くして待つてゐる八五郎

のことは誰にも聞かしちやならねえ。八、俺は八丁堀へ行つて來る。町役人に死骸を始末して貰つて、繩付は番所

平次は言ひ殘して八丁堀へ驅けました。

事件がその晩のうちに落着して、八丁堀の笹野新三郎に報告して歸ると、ガラツ八は平次を迎へて好奇心にハチ

しても凄い腕だ。腕自慢の御家人が五人、牛ヶ淵で出會はしたはいゝが、二人は斬られ、二人はお濠に叩き込ま

「甲賀町の御家人、岩井銀之助樣、二十五の辰年だ。腕は大したものぢやねエが

「その萩野といふ娘と、甲賀町の御家人岩井銀之助が、許婚の間柄と聞いたらどんなもので」

日に一人、五日に二人罪のない人間がお膝元の江戸で、人參牛蒡のやうに斬られるのは捨て置き難い。いづれ腕自慢が高じ

ました。辻斬や蕎麥切が怖かつた日にや、江戸で御用聞が勤まりますかてんだ」

たといふ傳説的な話さへ傳はつて居ります。江戸の街の夜の秘密は何を包んでゐるか分りません。ことによれ

それから十日あまり、とも角も江戸の夜は無事に過ぎました。が、月の出が遲くなつて、

辻斬を試みてから、次第に病的な嗜好が高じて、江戸の街の闇を横行して、生身を試すことに浮身を窶すやうになつ

やうだが、あの辻斬野郎を相手にするくらゐならあつしは大江山の鬼退治に繰り出しますよ。――素知らぬ顏をして、摺れ違ひざまに

「武家の騷動は眞平だ。大江山の鬼退治の方がまだしも面白からうよ、なア八」

度と重なると、次第に惡魔的な興味が高じて、神田一圓に九段から兩國まで荒し廻る辻斬の狂暴さは、さすがに幕府の

「近頃は辻斬の噂に脅えて、神田中の往來は日が暮れるとバツタリ絶える。辻斬だつて斬られ手がなかつ

野暮つたい風をして、九段から兩國へ、柳原から神田橋へと、淋しい道を選つて歩きますが、どうしたことか、

。曾て三代將軍家光が夜な／＼辻斬に出て、大久保彦左衞門にたしなめられたといふ傳説的な話さへ傳はつて居ります