大阪 有明 川崎 江戸 佐久間町 神田

生れて間もない娘のお君さんを殘して、大阪とかへ駈落ちをした――と聽いたが、それは本當かえ

があるのに、どうして師匠は、他の男と大阪などへ突つ走つたのだ」

お君といふ娘まであるのに、伊勢屋を飛び出して、大阪まで逃げ出してしまつたのです。――それから十何年、私は自分の

「有明の二本燈心が、枕許に點いてをりました」

「伊勢屋を追ひ出されてから、紀久榮のお菊は川崎あたりへ流れて行き、十五、六年も姿を見せなかつたが、伊勢屋

をしたといふ話ですが、男にも死に別れ、又江戸に舞ひ戻り、三味線堀に踊りの師匠をして、紀久榮といふ看板

へ聲を掛けたのです。年の暮によくある素晴らしい冬晴れ、江戸の町は、少し高いところへ登ると、坂の上からでも、火の見櫓

明日は大晦日といふ、ギリギリに押し詰つた江戸の夜は、吹き千切るやうな風に吹き捲くられながらも、時刻かまはぬ

んよ、大變も唯の大變ぢやねえ。お膝元の佐久間町で、花嫁が一人、新枕の床の中で殺されたんだ。あつしの

さう言ひながらも二人は、もう霜夜の街を、佐久間町へすつ飛んでをりました。

八五郎の大變が、神田明神下の錢形平次の家へ飛び込んで來たのは、その晩も