八丁堀 鎌倉河岸 江戸 甲府

「無理もない。あの男は兇状持だつたんだ。八丁堀と數寄屋橋の間をお百度を踏んでようやく判つたよ。紅屋の主人を

教へるわけぢやないが、岡つ引に縛られる前に、八丁堀の組屋敷へ驅け込んで、笹野新三郎樣御役宅に自首して出るがいゝ。自首

は歸られないことになる。――そのまゝ裏口から、八丁堀へ駈け付けるのだ。いゝか」

八五郎は飛び出すと、間もなく潰れた煙草入と鎌倉河岸の佐吉とその子分を三人までつれて來ました。

着てゐましたよ。今から三年前、久し振りで江戸へ來て、この店へ訪ねて來ると、恩返しをしたいから、親子二人

融通性を發揮し、形ばかりの遠島で二年目には江戸に還れました。

「へエ――、いつものやうにお店から甲府の出店へ送る商賣物の荷造をする心算で、手頃の空箱を搜し