八丁堀 西陣 江戸 両国 長崎 日本橋 向島 両国橋

怨み多い晩春の夕べ、八丁堀から大川端へ出ると、何だかこう泣きたくなるような風物です。

朗らかに笑う新三郎を伏し拝んで、平次は八丁堀の往来へ飛出しました。襟へベットリ冷汗。

言ったら、お前にも判るだろう。公儀御用の呉服屋、西陣の織物を一手に捌いた本家福屋の番頭から仕上げた善兵衛が、暖簾を

を拾って、長崎へ落延び、異人に軽業を教わって江戸へ乗り込んで来ると、善兵衛はあの通り日の出の勢いだ。子供一人ずつ誘拐し

両国に小屋を掛けて、江戸開府以来最初の軽業というものを見せた振袖源太、前

間もなく平次は、もう一度東両国の小料理屋に取って返して、身投げを思い止まらせた老爺の話を聞いており

。まる一昼夜、心当りを探し抜いた挙句、思案に余って両国から、フラフラと入水しようとしたのでございます」

翌る日の朝、ちょうど両国の見世物小屋の木戸が開こうという時、振袖源太の軽業小屋は、銭形平次の

「俺は漸く命だけを拾って、長崎へ落延び、異人に軽業を教わって江戸へ乗り込んで来ると、善兵衛は

日本橋通り四丁目に八間間口の呉服屋を開いて、一時越後屋の向うを張っ

の五日、二番目の二十一になる息子が、これも日本橋の家で、一と晩のうちに行方が判らなくなってしまったの

最初は先月の二十五日、二十四になる総領が、日本橋の店から白昼煙のように消えてなくなり、月を越して本月の五

のはこの間行方不明になった姉のお清とともに、日本橋の二人小町と言われた美人ですが、自分の身に降りかかる恐ろしい危難を

と言おうか、大袈裟と言おうか全く話になりません。日本橋の店から来た屈強な手代が十五六人、それに平次の手下

、廊下には信用の出来る子分を二人張り込ませ、自分は日本橋からやって来た大番頭の嘉七、寮の番人夫婦などと一緒に、

に籠ってしまいましたが、いかに警戒が大事でも、日本橋小町と謳われた十六娘の寝室に押し込んで、その美しい寝顔の番人まで

「親分さん、お早うございます。日本橋のお店で雑用を致しておりますが、今日は向島の寮が忙しいから

はいられませんから、二十四日の晩からお糸は向島の寮へやっておくつもりです。ついては親分、忙しいところを、何

その日、娘のお糸を護って向島の寮の警戒は、物々しいと言おうか、大袈裟と言おうか全く話になり

堀に通う猪牙の音の断続したのもしばし、やがて向島の土手は太古のような静寂に更けて行きます。

嫌な事を言い残して、利助は向島の方へ――、後ろも見ずに立去ります。

。日本橋のお店で雑用を致しておりますが、今日は向島の寮が忙しいから、あちらへ行ってみてくれというお話で―

であろうと思われている五日の朝から、平次は向島の寮に入り込んで、八門遁甲の陣を敷くほど念入りに準備を整え

しません。フラリと飛出すと、ツイ寮の入口から、向島の土手の上に駆け上がってしまいました。

御用聞の平次、夕景から界隈の小料理屋で一杯引っかけて、両国橋の上にかかったのはもう宵の口。