銭形平次捕物控 030 くるひ咲 / 野村胡堂
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、勝藏が下手人でないとは決らないぜ、俺は兎も角八丁堀へ行つて來る。町内の若い者なり、浪人なりを縛るがよからうよ」
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取りました。美く清らかな花屋のおかみが暫くの間江戸の評判になつた事は言ふ迄もありません。
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變死の屆出があると、町役人が立會の上、四谷の御用聞で朱房の源吉といふ顏の良いのが、一應見に來まし
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麹町四丁目、疊屋彌助のところに居る職人の勝藏が、裏口から調子つ外れ
の騷ぎになるから、少し靜かにしてくれ。麹町へ巨蠎なんか出つこはねえ」
麹町四丁目の、お町の家へ行つて見ると、隣の疊屋の井戸から
「麹町四丁目だよ。疊屋と大里とかいふ浪人の家と、それからお町
二人はもう日が暮れたといふのに、麹町四丁目までやつて行きました。
お勢の妖しい魅力は、間もなく麹町中の若い者を氣違ひにするのではあるまいかと思ふやうでし
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「神田の平次親分のところに居る八五郎で、へエ――」
「神田の八五郎兄哥は、此家の中に下手人が居る見込だとよ、
ガラツ八は默つて了ひました。折角神田から引張り出して來た親分の平次も、これでは源吉と大した變り
「お町さんは居なさるかい。神田の平次だが、ちよいと逢つて下さい」
騷ぎのあつたことは知つて居る筈ですから、神田の平次といふ言葉がピンと來たのでせう。
平次はろくに返事も聽かず、其儘神田へ引揚げました。
平次は宜い加減にして神田へ引揚げました。事件はこれで何も彼も大團圓になつた
二十重に投げかける妖しの網を切り破るやうに、平次が神田へ歸つて來たのは、もう夜中過ぎでした。
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物に着換させて、二人の下女と、それから、日本橋から驅けつけたといふ、お町の姉といふのが、線香を
「日本橋の大店の若旦那との間に、――私が十六の時生んだ娘
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「お、人形町の師匠ぢやないか」
繕つたところを見ると、紛れもありません。それは人形町で踊の師匠をして居る、有名過ぎるほど有名な女だつたのです
人形町に居る時は、色白の素顏を自慢したお勢、どう踏んで
「引越しですよ、私は矢張り人形町の方が水に合ひさうで――」