熊谷 今戸 江戸 浅草 千住 草加 神田

「何にもありませんよ、――妹を熊谷の親類へやった外には」

たかわかりません。坂本の叔母のところへやって、熊谷へやったと申したのはそのためでございます。――これだけ言って

「今戸で小体な小間物屋をしていますよ。妹とたった二人で」

「だが、江戸の街は広いようでも、人間一人殺して、一と月も知れないよう

「江戸にいれば、疑いでも受けるような筋でもあったのかい」

菱屋の娘のお茂が、母親に死に別れて、草加からそっと江戸へ帰っているのを、ときどき訪ねている様子ですが――」

菱屋が没落してから三年、江戸を外にして放浪して歩いて、艱難と貧苦とが、この女から

「菱屋の娘が江戸へ帰って来ているようだが、ここへ来ることがあるのか」

母親が死んだ後のお茂は、お上の御目こぼしを幸い江戸に流れ込み、やくざ者の利八や、以前許婚だった金蔵に関係して、自堕落

浅草山の宿の金蔵というのは、まだ三十三四の若い男です

欠所。江戸構えになった母娘が二人、草加とか千住とかにいると聞きましたが――」

「千住の大橋屋の浜夕てんで、お目にかけたいぐらいのもので

「千住へ行って聴いてみましょうか、本当に浜夕とかに通っている

その代り、諸種の情報が一度に集まって来ました。千住の大橋屋に行ったガラッ八の報告は、平次の予想した通り、

「千住の浜夕などに熱くなったのはどういうわけでしょう」

、菱屋は欠所。江戸構えになった母娘が二人、草加とか千住とかにいると聞きましたが――」

の主人、菱屋の娘のお茂が、母親に死に別れて、草加からそっと江戸へ帰っているのを、ときどき訪ねている様子ですが――

なった上相踵いで死に、内儀と娘のお茂はいちど草加に隠れましたが母親が死んだ後のお茂は、お上の御目こぼしを

快適な秋の朝風に吹かれながら、神田から山の宿まで、ちょっと出のある道程です。

「神田の平次だよ、――少し訊きたいことがあって来たんだが