石見銀山 江の島 江戸 岩本院

、味噌汁の中に、馬でも殺せるほどの毒藥――石見銀山鼠捕りといふ、砒石劑が入つて居り、お關が一と口で氣が

「冗談ぢやありませんよ。鎌鼬が石見銀山や手槍を使つてたまるものですか」

ますが、宜いあんべえに、親方の月齋と一緒に江の島の辨天樣の欄間の修復に行つて、十日も江戸へ歸つて來ませ

「それならわかつて居ますよ。江の島の修復は、まだ十日くらゐはかゝるさうで、月齋と雪五郎が、

にもならず、師匠の月齋が息拔きのつもりで江の島の仕事につれて行つたといふわけで」

「直ぐ許されて歸りましたよ。江の島から江戸へ入つたのは夕方、中の郷の師匠の家へ着いたの

「ところが、江の島の仕事は思ひの外早く片付いて、十四日の晩雪五郎は江戸へ歸つて來

江の島の辨天樣の欄間の修復に行つて、十日も江戸へ歸つて來ませんよ」

――何より、お關の許婚の雪五郎は、まだ江戸へ歸つて居ないか、それを調べてくれ」

十日くらゐはかゝるさうで、月齋と雪五郎が、江戸へ引揚げて來るのは、この十五日か十六日になる筈です」

日に江の島から歸る筈のが、一日早く十四日に江戸へ歸つたから、飛んだ行き違ひが起つたのだ」

それから一と月くらゐ經ちました。江戸の春がまさに爛漫といふ頃ですが、八五郎の胸には妙にこだはり

「直ぐ許されて歸りましたよ。江の島から江戸へ入つたのは夕方、中の郷の師匠の家へ着いたのは戌

「雪五郎は十五日か十六日に、江戸へ歸ると思ひ込んで居たお關は、十四日の晩は、どうし

の仕事は思ひの外早く片付いて、十四日の晩雪五郎は江戸へ歸つて來てしまつた。下手人の疑ひは眞つ直ぐに雪五郎の

やりましたが、雪五郎は師匠月齋と共に、岩本院に籠つて、島から一歩も外へ出ないとわかり、これは全く