湯島 江戸 小田原町 湯島天神 下谷 日本橋 住吉 上野

その日の晝頃、湯島から本郷一帶に妙な噂が廣がりました。

救ひ出しませう。そして金三郎樣とやらは、二三年江戸から足を拔いて下されば」

で、この秋から住み込んでゐたが、――請人は小田原町の源七。間違ひもなく働いてゐたが、遊び癖があつて夜歩きするの

を、驅けつけた下つ引や、町役人に任せて湯島天神町に向ひました。

「下谷竹町の永寳寺――こゝでは王若水の唐子嬉遊の大幅が

平次と八五郎はそれから直ぐ出動しました。最初は下谷永寳寺、寺格の高い襌家の巨刹で、住職の冷嚴和尚は、

「變なことを訊きますが、お店の菩提寺は下谷の永寳寺でせうな」

（例）日本橋本銀町

は、狩野法眼元信の高士觀瀑の幅が盜られ。日本橋本銀町の阿波屋藤兵衞は雪舟の秋景山水の六曲一双の屏風が

時――今から三十年も前であらうか、檀家の日本橋本銀町阿波屋の寄進を受けたものだと聞いてゐる」

阿波屋――日本橋本銀町の兩替屋阿波屋藤兵衞のところでも雪舟の秋景山水の屏風が

平次と八五郎はそこから引返して日本橋本銀町に向ひました。兩替屋の阿波屋藤兵衞といふのは、

て南宗北宗兩派の技法を體得し、更に和風の土佐住吉の畫風に亙り、技巧の上に於ては完璧の境に達したの

も燒いてしまひました、――心殘りの一幅は上野の寺内にあつて見れば力及ばない」