湯島 丸山町 岩佐 宇都宮 巣鴨 神田 駒込 上野 大塚

なつたところを、荻野左仲の目に留つて、暫らく湯島に圍はれ、本妻が死んでから丸山の屋敷に入つて、跡取の勇太郎

「幸ひ私も、近いうちに、丸山町に歸ることになりました。それもこれも、親分の御骨折の御蔭、

「冗、冗談言つちやいけません。御新造はもう丸山町のお屋敷に歸んなさる身體だ、――男を泊めたとあつちや、

のでした。灯を背にして、ほの白い顏、岩佐又兵衞の繪から拔出したやうな、妖艶な姿態が、相手を苛立た

では、將軍秀忠の命を狙つたといふ疑ひで、宇都宮十五萬石を召上げられ、先年出羽の配所で死んだ本多上野介正純――

「梅の花ぢやよ、――巣鴨のさる御屋敷の庭に、大層見事な梅の古木がある。この二三

に取掛つて、三人連れの無駄話に興じ乍ら、巣鴨の屋敷に着いたのは、彼れこれ未刻半刻。

を一人生みましたが、仔細あつて左仲に疎まれ、巣鴨の梅屋敷に遠ざけられて、女中を相手に豪勢な暮しをして居るの

そんな事を言ひ乍ら、茶人帽を阿彌陀に、足元危ふく巣鴨の夜の闇へ出たのです。

美しい女中達も遠く退つて銘々の部屋へ入つた樣子、巣鴨の夜は、滅入るやうに、たゞ深々と更けて行きます。

翌る朝、巣鴨の往來――一寸人に氣付かれない塀の蔭に、三好屋の

騷ぎは一刻も經たぬうちに、巣鴨中を煮えくり返らせました。名主五人組が立會つて檢屍を受け、

「錢形の親分が幻の民五郎に嘗められだつて巣鴨中の評判だぜ。俺は口惜しくつて、口惜しくつて、先刻から、そんな事

に逢ひ、一刻餘りも話し込んだ上、其處を出ると、巣鴨の荻野家の別莊――今はお紋の宿へやつて來まし

「神田の三好屋が、平次親分を連れて參りました。御新造樣に御

「初めて御目にかゝります。あつしは神田の平次で、お言葉に甘えて、飛んだお邪魔をいたします」

居るガラツ八は、追つ立てるやうにして宵のうちに神田へ歸しました。

張つて居さへすりや、こんな事がなかつたんだ。神田へ歸つたのが一代の不覺さ」

「大丈夫、駒込へ出る前に駕籠を拾つて行く、年は取つてもシヤンとし

紋の父河村靱負の形見と言ふ短刀、――主君本多上野之介が、東照權現樣から頂いて、靱負に預けた儘になつた

三つ葉葵の紋散らしで御公儀に書上げのある品、本多上野之介樣の御品と判り切つて居ります」

名主五人組が立會つて檢屍を受け、土地の御用聞大塚の重三が、委細呑込んで探索にかゝりましたが、其處に居合せた錢

その間に、お紋の説明を聽いた大塚の重三は、

大塚の重三は、十五六人の子分を伴れて、もう一刻も前から

大塚の重三はすつかり得意でしたが、肝腎の高木鋭次郎は、骨が舍利に