八丁堀 出雲 鎌倉町 神田明神 江戸 向島 神田 浅草 隅田川 両国橋

お峰を八丁堀に送って、小梅から神田明神下への帰り、八五郎は執拗に平次に

ないでしょうが、何んでも私の父親は、故郷の出雲で、若気の過ちで人を害め、江戸へ逃げて来て名前まで変え、

ぬ暖簾に仕あげたのだということでした。其処へ出雲の国から訪ねて来た赤の他人の岩太郎が、父親の旧悪を並べ立てて、

滝の注いでくれる盃をふくみました。十年前に出雲の国から出て来たこの山男も、金と時間があって、江戸の空気に

、生命を吹込んだような清らかな娘でした。家は鎌倉町の本店裏の路地に挟まれた駄菓子屋。母親一人の細い商で、資本

。早く親に死に別れて、叔父の出雲屋岩太郎に引取られ、鎌倉町の店で、多勢の番頭小僧と一緒に、糠だらけになって働いて居り

の療養生活を送り、もう一と月もしたら、又鎌倉町の店へ帰るがよい――と言うところまで漕ぎつけて居りました。

鎌倉町の店で成人した新吉は、その裏の横手を走る、浮世小路の貧し

「鎌倉町の出雲屋の岩太郎が、妾のお滝を小梅の寮に入れて、人

もない、人に怨まれるような男じゃございません。鎌倉町の店の支配をさして居りますが、私とはまるっ切り気風が違って、

手代の才六どん、あれは飛んだ猫っ被りですよ。今までも鎌倉町の路地裏へ潜り込んで、お滝さんの母親に取入って居たことを、知ら

年ばかりのうちに、すっかり身上を殖して、江戸の鎌倉町で、押しも押されもせぬ暖簾に仕あげたのだということでした

のは一人もありません。下男の次六は、昨夜も鎌倉町の店へ使いに行って騒ぎのずっと後で戻って来たようで」

お峰を八丁堀に送って、小梅から神田明神下への帰り、八五郎は執拗に平次に喰い下るのでした。

は、故郷の出雲で、若気の過ちで人を害め、江戸へ逃げて来て名前まで変え、同じ国から出た出雲屋に婿入し

、十年ばかりのうちに、すっかり身上を殖して、江戸の鎌倉町で、押しも押されもせぬ暖簾に仕あげたのだということ

「江戸には鎌鼬は居ないというじゃありませんか」

出て来たこの山男も、金と時間があって、江戸の空気に同化して行く器用さがあったために、何時の間にやら

は、お峰という美しい妾があるにも拘らず、向島の寮にはもう一人の妾、お滝という十七になったばかりの

向島までは遠くとも、そぞろ歩きにも悪くない時候でした。

向島へ着いたのはもう夕景でしたが、あまりの騒ぎに顛倒して、

新吉は黙って平次の後から、向島の土手へ、そして夜の水を眺めながら、黙って下手の方へつい

やって来ますが、平次は家へ引込んだきり、あまり向島の方へ足を向けず、妙に考込んでばかり居るのです。

「日本の国に――それも向島にあったんだから、俺はこの四、五日考えてばかり居るよ

見て居た私が、死神に取っつかれたように、向島の土手をフラリフラリと歩いて居る新吉とお滝の二人を見付けて、

明神下から向島の小梅まで、平次も八五郎も汗になって辿り着いたのは、辰

尻を汚す手前、取換引替え蓄えた妾の一人で、既に神田鎌倉町の本宅には、お峰という美しい妾があるにも拘らず、

母娘二人の駄菓子屋があり、その娘のお滝が、神田切っての美しい娘であったこともよく知って居ります。

お峰を八丁堀に送って、小梅から神田明神下への帰り、八五郎は執拗に平次に喰い下るのでした。

よ。板前の重三郎は、何んか客寄せがあると、浅草から呼んで来る中年男、俎板の傍を煙草一服の間も離れません

に忍んで行って一と思いに刺し殺した上、私も隅田川に飛込んで、死んでしまう積りでした」

に間違いのないように、見張らせてありますよ。何しろ隅田川が近いからうっかり目を離せないでしょう。ドブンとやられた日にゃ取返しが

にお妙と妓共、最初から割れ返るような賑わいで、隅田川の河童を驚かし、その乱酒と狂態が、夜と共に深まって行くの

切らない人達は、葉桜の若芽に興じて、未練がましい隅田川のほとりに、一刻の春宵を惜しんで居ります。

、一と纏めにして、直ぐ目と鼻の間の隅田川に沈めたことだろう、後で引上げて洗うのは、お手のものだ

平次は足も淀めず、両国橋の夕陽の中を、明神下へ急ぐのです。その後から八五郎は、首