九州 本郷 江戸 丹後 神田

「姉の許婚の方でございます、明後日九州から御入府の筈で」

たんだが、行方不知になつたお茂世さんは、九州から出府する許婚の芝田何かといふお侍を嫌つて居たさうです

に仕へてゐるといふ芝田要は、その日の晝頃九州から入府、江戸屋敷の留守居に挨拶した上、その足ですぐ金助町

と八五郎の話を綜合すると、一昨日の朝、本郷切つての美人といはれた、金助町の浪人大瀧清左衞門の娘お茂世

形平次は、一面にはまた恐ろしく無精なところがあり、江戸の町人達がよく／＼平次の叡智と腕とを借り度いと思ふ場合

が行方不知になるのを一々不思議がつた日にや、江戸に住んぢや居られないぜ」

「それから心當りを方々尋ねて見ましたが江戸には近い親類も懇意な家もなく、姉の行方は少しも見當がつき

「第一に、お孃樣は許婚の芝田樣とやらが江戸へお還りになるのを、あまり喜んではゐらつしやらなかつたさうで」

うが、金兵衞はそれを撫めすかして切通しの望月丹後の屋敷につれ込み、妾奉公するやうに責めたことだらう。お茂世さん

たことを思ひ出したのでせう。平次の家――神田臺所町から、湯島金助町まではほんの一と丁場。八五郎を從へ、